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■中村剛「名古屋弁」一語一絵

何事も出合い頭〈「はじめに」から〉中村 剛

 普段、何気に使っている「行こまい!」「元気だしゃぁ〜」「ほれみやぁ〜」「これでええかしゃん」。さらに、「トキントキンより、トッキントキン!」「チンチンより、チンチコチン!」「どえりゃぁ〜より、どえらけにゃぁ〜」といった、名古屋弁の中でもより強調した表現がオモロくて大好きだ。

 そんな私が、それまでまったく面識のなかった舟橋さんの著書『名古屋弁トキントキン講座』の挿絵を描いた。といっても、この本のために描き下ろした訳ではない。

 実は「JAなごや」さん発行の「Cityなごや」という月刊広報誌内の「名古屋弁のある風景」というコラムが3年半ほど前に始まったのがきっかけ。それまで表紙や中面の漫画等を描いていた私は、当初カットやイラストが一点増えたくらいの認識で、原画も10センチ四方程度の大きさだ。

 3、4回目が過ぎたあたりだったか、舟橋さんから印刷所を通じて一回だけ注文が入った。「イラストが説明的だで、面白みがあれせん。まっと自由に、好き勝手に描いてちょぉ!」と。

 そりゃそうだ、むしろその説明をするつもりで描いていたのだから。予想外の意見だったが、この一言で私の頭の中も180度ガラリと切り替わり、その後は勝手気ままなノリで描き続け、知らぬ間に40回を超えた。

 昨年、そのコラムが『名古屋弁トキントキン講座』という一冊の本になった。さらに今回のジュンク堂書店での「挿画展」。まったく想定外の流れだ。

 「挿画展」というには、作品の質からしてあまりに脆弱で不本意な感じ。そうと分かっていたら、もっと気合いを入れて、せめて A4くらいの大きさで描いたのに……。35年以上フリーでいろいろなイラストを描き続けて来た自負もあり、「オレのポテンシャルはこんなもんとちゃう!」という思いも湧く。

 ところで、これらの挿絵を観て、皆さんはどう感じているんだろう? まったく分からない。長くこの仕事をしていると感じるが、時に描き手と受け手の感覚がまったく違うということも珍しくはない。

 気合い、時間をかけて制作したとしても、必ずしも良いモノが出来るとも限らない。納期に迫られ、突っ走って描き上げたイラストの方が出来が良かったり、ってのはよくある話だ。逆に肩の力を抜いて遊び心に任せて描いてきたこれらの挿絵たち……。かえってコラムの内容とマッチし、ちょうどエエ具合になっていればいいなぁ〜と思っている。

 舟橋さんの書かれるコラムという「主菜」の脇にある「添え物(副菜)」として、この挿絵を愉しんでもらえれば本望である。

 現在進行形の「名古屋弁のある風景」、いつ終わるかは分からない。それまでは先月初めてお会いした舟橋さん(ユニークで、エネルギッシュなママチャリライダー)との共同作業、今しばらく大いに愉しみたい。

 そして何より、挿絵にスポットを当てていただき出版にご尽力された風媒社の山口さん、この仕事をいただいている愛明社の田中さん、さらにジュンク堂さん(名古屋栄店)……、多くの皆々様に感謝、感謝です!

瓢箪から駒〈「おわりに」から〉舟橋武志

 名古屋・栄のジュンク堂書店には贅沢にギャラリーがある。『名古屋弁トキントキン講座』(風媒社刊)の出版にちなみ、そこで展覧会を開く話が出てきた。メインは本で使用した挿絵を拡大して展示、そのにぎやかしにトークショーとサイン会、合わせて本の販売を行うというのである。

 トークショーとサイン会とは大変なことだ。無口なワシにしゃべらせるとはひどい話だし、何よりも役者や芸能人でもないのに人を集められるのか。出版社からの話に軽く乗ったが、反省しきりの日々となった。

 しかし、サイはすでに投げられている。販売に貢献しなければならないし、こんな機会を与えられるチャンスもまたとない。恐ろしさを感じながらも、だんだん覚悟だけはできてきた。

 『名古屋弁トキントキン講座』はJAなごやさんの広報誌「City なごや 」の連載をまとめたものだ。そこにイラストを添えているのが中村剛氏の手になる作品である。これがあることによって、紙面を引き立たせてもらっている。

 しかし、出版の話が出るまで、だれが描いて下さっているのか、ましてやお会いしたこともなかった。制作と印刷を担当する愛明社さんへ原稿を送信するだけで、本の話が出てくるまではそれが中村氏であることすら知らずにいた。そうした意味で、出版はいい出会いにもなった。

 中村氏の作品を見ていると、苦労のほどがしのばれてくる。ときには笑えてきて、こちらが負けていたりする。知り合えたのを機にコンビを一層強化する一方、どちらが勝つかの格闘技をこれからも展開していきたいと思っている。

 本書は展覧会のにぎやかしの一つとして、あわてて図録風に作ったものである。これには出版後の連載分も収録することができた。中村氏の作品に合わせて簡単な解説文を添えたが、不明なことやさらに深読みしたいという方には本をご覧いただけたらありがたい。

 JAなごやさん、愛明社さん、風媒社さん、そしてジュンク堂さんにはただただ感謝あるのみ。そして、ご来場いただいた方々、本を買って下さった方々にも感謝しきりである。

 

 


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