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会報こそが活動の求心力
継続することに意義がある


会報こそが活動の求心力 継続することに意義がある   書皮友好協会の会報「書皮報」の場合


 愛知は「書皮協」発祥の地

 本を買うと店独自のブックカバーで包んでくれる。そのカバーを「書皮」と言う。中国では「シューピー」と発音し、「ブックカバー」と「本の表紙」の二つの意味があるそうだ。

 われわれは何気なく包んでもらっているが、こうしたことが行われているのは世界でも日本ぐらいしかないらしい。最近では「カバーをおかけしますか」と聞かれることも多くなってきた。資源節約の折でもあり、もっともなことかもしれない。

 しかし、本の好きな人たちにとって、カバーでやさしく保護してやりたい気持ちになる。それに、電車の中でハダカで読んでいたりすると、周りの人に頭の中味までのぞかれているようだ。ブックカバーにはそれなりの効用があり、資源の節約は他の面でも十分できるのではないか。

 このカバーは書店にとっても意義はある。売る本はどこも同じで同じ価格だ(再販制を撤廃せよ!)。カバーがあれば、その同一商品に店独自の個性を付加できるし、ひいては宣伝にもなる。何よりも持っている人の本がお代済みであるか否かが一目で分かり、万引きを防止する上でも役立つ。

 やる気のある書店は大体においていいカバーを作っている。デザインにこだわり、紙質にまでこったりる。なかには何種類ものカバーを用意し、「どれにしましょうか」と聞いてくる店もあるほどだ。

 こうした書店の作るカバーに早くから注目した人がいる。岡崎市に住む教員、みさきたまえさんがその人。職場の図書館でカバー展を開催することを思いつき、『本の雑誌』の投稿欄に「家康の故郷、三河の本屋さんのカバーと交換しませんか」と呼びかけたのだ。

 するとみさきさん自身も驚くほど、全国各地から反応があった。ブックカバーに関心を持つ人が多いことを知り、ついには同好の士を集めて「書皮友好協会」(略称・書皮協)なる看板を揚げてしまった。筆者も「書皮」なる言葉を初めて知ったのはこの会名からだったが、こうして岡崎市は栄えある協会発祥の地となったのである。

 同会の会員は100名を超すほどになった。地域や職業、年代も様々な人たちの集まりとなっているが、当然のことながらブックカバーに興味を持つ人が多い。主な活動としては年1回の全国大会と会報「書皮報」の発行である。

 全国大会は毎年秋に各地を持ち回りで開催される。この日、会員たちは自分の集めたカバーを持ち寄り、参加者全員の投票によって、その年の「書皮大賞」(全国の書店が対象)と「地方賞」(開催地の書店が対象)とを決める。こうした活動はもう20年も続いていると言うのだから、そこらでよく見かけるぽっと出の会とは違っている。

 初めは個人的な興味から始まった会ではあったが、これだけ続くと無視できない存在になってくる。耳慣れない「書皮」なる言葉もかなり一般化してきたし、ブックカバーがマスコミなどで話題にされることも多くなってきた。書店の中には「書皮大賞」をねらって、カバーを刷新するところも出てきているほどである。

 「書皮報」はこうして作られる

 さて、同会の発行する会報を紹介しよう。題名が「書皮報」であることは先に述べたが、サイズはB5判でおおむね70ページ前後、原則年2回の発行となっている。同好会の会報としてはページ的に見ても、なかなかのボリュームと言えよう。

 会員には本好きの人が多いだけに、読みごたえのある記事が目立つ。意気込みに燃える発足当初に連載された「書皮学概説」はブックカバーの定義や分類、その歴史、さらには店頭で行われている折り方までを考察したロンブンで、未知のガクモン領域にまで足を踏み入れている。

 また、カバーを題材にした読み切り小説もある。34号の「四万十川に書皮は散った」は書店業界とカバーとのかかわりを描いたなかなかの傑作。もちろん、会員相互の情報交換的な記事も多く、書皮狂ならずとも思わず紙面に引きずり込まれてしまいそうだ。

 ぼくなどは本そのものに関心はあっても、カバーにはそれほど興味はない。本の皮まで愛してしまう、これほど偏執狂的な人たちがいるというのが面白い。何事も徹底すれば、道は開けてくるということか。

 こうした会報は編集長の持ち回りで作られている。「持ち回り」というと一定の決まりでもありそうに思えるが、「暇のある人が適当期間やっているだけで、継続できなくなれば次の人にバトンを渡す」程度とか。趣味で集まっているにすぎず、担当者に負担のかかるようなことは望めない。

 そのため、執筆者は完全版下にして渡すのが原則となっている。誤字、脱字はもちろん、文章の言い回しなどに至るまで、すべてがその人の責任となる。担当者はこうして集められた原稿を組み、目次や連絡事項、編集後記などを付け加えてゆくわけだが、この作業ですら、かなりの負担になることが多いそうである。

 最近はパソコンで編集したものが増えてきている。なかには手書きで書かれた原稿もあるが、それがかえって新鮮で、書き手のぬくもりが伝わってきたりもする。完全版下で入稿するため、印刷製本代は200部で7万円前後で納まっているとか。

 インターネットが普及し、Eメールやホームページも一般化しだした。しかし、文字に対する愛着はいまだ根強いものがあり、会の活動にとって会報は大きな求心力となるものだ。その点、ユニークで中味の濃いこの会報は会員たちを結び付ける重要な役割を果たしていると言えそうだ。

 会報は出し続けなくてはその意義も薄れてくる。継続するためにはできるだけ安く押さえ、編集面や資金面で負担とならないようにすることだ。こうした活動をしている人々にとって、完全版下で入稿する書皮協の制作方法には大いに学ぶべきものがある。

 出来上がった本は会員と業界関係者などに郵送されている。一般には販売されていない。ただし、創刊準備号から第11号までを収録したものは『合本「書皮報」』として出されており、こちらは少部数ながら市販もされた(小社刊、本体1600円)。

 この「書皮報」とは別に、同会ではホームページも開いている。URLは「http://member.nifty.ne.jp/bcover/」。こちらも有志による制作であり、頻繁に更新されているわけではないようだが、興味のある方は一度ご覧になってみてはいかがだろうか。

 参考までに同会の会員になるには年会費2000円が必要。問い合わせ先は世話人みさきたまえさんか小社まで。


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