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三重県藤原町

三重県の“北の玄関口”として発展 絶景かな、藤原岳の登山で一汗

藤原岳をあおぐ
高台から町を見下ろせば……

 藤原町は三重県の北の端に位置する。北は岐阜県に、西は滋賀県に接し、烏帽子岳、三国岳、藤原岳などといった山々が県境をなす。それらの山から出た水は員弁川や真名川となって町の中央部を流れ、川の周囲にかなりの平野を作り出していた。

 その員弁川を遡るように、国道306号で町に入った。標高1120メートルと町内では一番高い“町のシンボル”藤原岳が眼前に迫ってくる。しかし、間近で見たそれは採石によって頂上付近まで削られた痛々しそうな山だった。

 車をさらに奥へと走らせ、長楽寺前を通り過ぎて高台に出た。人もあまり通らないような山道で、ここを訪れる観光客はまずあるまい。わざわざ来たのも、町全体を見下ろせる絶好の地、と聞いたからだ。

 山を背にしての眺めはさすがに抜群で、遠く桑名や四日市方面までも望めた。手前には右手の山間部に中里ダムが見え、中央部には丘陵や平野が広がっている。そして、左手にはいま来た国道が白い糸を引いたように延び、その周りに家々がかたまって集落を形作っていた。

 しかし、よく見ると丘陵地にはゴルフ場があり、工業団地も造成されている。周辺の山では石灰岩を産出し、あちこちで採石されている。現にこの足下にも採石工場が広がっていた。

 「うちはあまり観光には力を入れておりませんのでね。ごみを捨てていく人が、けっこう多いんですよ……」

 役場に立ち寄ったとき、女性の職員は笑いながらそう言った。名神関ヶ原インターから車で約30分、“北端の町”は“北の玄関口”へと大きく変わろうとしていた。その言葉の裏に、いま見ているような現実があったのか、と独り納得した。

 

「滋賀県まで通じている」
県の天然記念物「篠立の風穴」

 足下の工場はすでに廃業しているようだ。敷地内には青草が生い茂り、人のいるような気配もない。県の天然記念物に指定されている「篠立の風穴」は、その工場の近くにあるはずだ。

 いったん山を下り、工場の方へとまわった。工場は荒れるにまかされ、機材なども放置されたまま。荒涼とした光景は異様だが、それはまた巨大なオブジェのようにも見えてくる。

 風穴はその工場脇を流れる、川沿いのがけの中腹にあった。鉄製のはしごを登り穴の前に立つと、中から冷たい風が吹きつけてくる。誘われるようにして入口へと向かったが、残念ながら、中には入れないように厳重な扉が設けられていた。

 この山自体もやはり石灰岩でできている。地元の人の話では「滋賀県まで通じている」と言い伝えられてきたそうだ。ここへ来る前、篠立地区で出会ったお年寄りは「こっちでもあまり中に入った者はおらん」と言い、居合わせた小学生たちも「ぼくたちはときどき遊びに行く」「でも、中はこわいので入れんよ」と口々に説明してくれるのだった。

 しかし、実際に確認されている距離は180メートルくらいのものらしい。それにしても、かなりの長さではある。洞内にはめずらしい生物も生息しているそうだが、中は一体どのような構造になっているのだろうか。

 

気分そう快!「やっぱり山はいい」
藤原岳へ登る

 「さあ、頑張るぞ!」

 朝起きると気合を入れた。今日は目の前にある藤原岳に登る。表登山道から入山したが、この山は三岐鉄道の終点「西藤原」駅を降りてすぐ登れることから、登山者やハイカーに人気がある。

 「表はゆるやか」と聞いていたが、なかなかどうして、額から大粒の汗が吹き出してくる。約1時間ほどで8合目に到着、ここからはゆるやかになるが、クマザサをかき分けての行進だ。途中、白い穂を付けたトラノオやススキなどが目を楽しませてくれた。

 この日一番乗り!と意気込んできたが、頂上にはすでに一人の先客がいた。ここからの眺めは素晴らしく、眼下には伊勢平野が広がり、木曽三川の流れも手に取るように分かる。山頂にはすっかり秋の気配が漂っていた。

 「この山のいいのはこれからですよ。特に冬は一面に樹氷ができ、それが光を受けてキラキラ輝く様は、別世界へ迷い込んできたよう。運が良ければ、カモシカやクマタカなどにも出合えますしね」

 その人は年に何度もこの山へ登っているそうだ。今日は天狗岳―白船峠―御池岳と縦走する予定とか。高原状に連なる藤原岳にはこんな楽しみ方もある。

 帰りは裏登山道を降りることにした。こちらはかなりの急坂で、登りで来た人はさぞかし大変だったろう。先ほど会った人は「早く着くから」とこともなげに言っていたが、さすがは山男である。

 

大斜面を背に、名刹ひっそりと
聖宝寺の庭園、見事

 ほうほうの態でふもとに到着した。真っ先に出迎えてくれたのが鳴谷の滝で、涼風が吹き出した汗をたちまち抑えてくれる。わざわざ裏登山道を選んだのも、名刹があると教えられていたからだ。

 滝壷で一休みした後、山門の方にまわった。美しい鐘楼を見上げながら石段を上り切ると、藤原岳の急斜面をバックにして本堂がたたずんでいた。境内は老樹におおわれ、池や石などを配した見事な庭園になっている。

 ここ鳴谷山聖宝寺は平安時代の初期、天台宗の開祖・伝教大師(最澄)によって開かれた寺。戦国時代に兵火で焼失したが、江戸中期に再興されて現在の臨済宗に改められている。庭園の大部分は平安当時のままだそうで、古風な中にもなかなかの趣のある庭だ。


藤原岳のふもとにある聖宝寺の庭園
藤原岳のふもとにある聖宝寺の庭園
 秋の紅葉はとりわけ見事だそうな。真っ赤に染まるモミジは“血のモミジ”とも言われているそうだ。シーズン中はライトアップもされ、夜も多くの人が詰めかけるとか。

 ひとしきり散策を楽しみ、門の外へ出た。あちこちに「お山を汚す者は帰りなさい!」の立札。まったくこんなきれいな庭や山に、ごみを捨てていく不届き者がいるとは情けない。

 門から少し歩いたところに料理店があった。そういえば、この町ではマスの養殖も盛んだ。前庭に広がる養殖場や釣堀を見学した後、おいしいマス料理に舌鼓を打つのだった。

 

[情報]藤原町役場
〒511-0511 三重県員弁郡藤原町市場115
TEL:0594-46-3311

 

 

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