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岐阜県白川町

ただいま、イタリア調で夢おこし 山里に流れるパイプオルガンの音色

「白川茶」と「東濃ひのき」と
あなたのイメージは中濃?東濃?

 白川町の広いのには驚かされた。国道41号はしばしば通るが、それは町の西端をかすめているにすぎなかった。町は国道東側にある山の向こうに延々と広がっていたのだ。


町内のあちこちで見られる大茶園の一つ
町内のあちこちで見られる大茶園の一つ
 白川と言えば、真っ先に思い浮かぶのが白川茶。山あいの国道を走っている限り、「どこにそんな茶畑があるのか」と疑問にかられてくる。しかし、一歩奥へ踏み込めば町内のあちこちに整備された茶園が見られ、とりわけ大山白山神社へ行く途中で出会った光景は、まさに本場を思わせるに十分なスケールだった。

 そしてもう一つ有名なのが“町の木”であるヒノキ--いわゆる東濃ひのきだ。国道41号で北上すると東濃というイメージはないが、町の東端が恵那市や瑞浪市と接していることを知れば、まぎれもない東濃ということになる。初めて踏み入れた白川町はそれほど広い面積だった。

 町はそのほとんどが山林におおわれている。なだらかな傾斜地は茶畑に適し、深い山々がヒノキの名木を育んできた。こうして車で町中を走っていると製茶工場をあちこちで見かけ、そして、材木の集荷場やモデルハウスの展示場なども目についた。

 先ほど来た国道41号は近年、交通量がめっきり減っているらしい。下呂、高山方面へ向かう行楽客は中央高速を中津川インターで下り、そこから国道257号を利用して下呂へ抜けるようになった。飛騨川沿いに走る41号は眺めも素晴らしいが、その分、曲がりくねっていて時間もかかるのが敬遠されてしまったようだ。

 その国道脇にある道の駅「ピアチェーレ」。一見、教会かと見まがうような造りが行き交うドライバーたちの目を引き付けている。ここにはレストランや特産品の売り場などもあり、出されたお茶はやっぱり本場ものだけにおいしかった。

 

アウトドアライフは大自然の中で
白あり黒あり、赤も黄も緑も

 飛騨川の支流、白川をさかのぼる。白川は当然としても、町内には黒川、赤川もあるというから面白い。白川は文字通り清くて澄んだ水が流れ、黒川は特産の麦飯石で黒ずみ、赤川は鉄分で赤く染まっているそうだ。が、驚いたことに花崗岩で黄色く見える“黄川(蛭川)”や山の木々を写して緑色に映える“緑川(佐見川)”まであるとか。

 水と緑のふれあいランド「クオーレの里」。白川の左岸に広がる大正河原にあり、この町の中心的なレジャー施設だ。園内にはペンション風のコテージ10棟をはじめ、バンガローやキャンプ場、ます釣り場などもあった。

 いまはシーズンに一足早く、訪れる人もまばらだった。これよりさらに奥にあるという笹平高原へ行ってみることにした。二つのスポットは約5キロの観光道路「白川銀河ライン」で結ばれて一体となっている。

 高原にはイタリア館と野外音楽場があった。「クオーレ」だの「カステッロ」(野鳥観察棟)だのと聞き慣れない名前が多いのを不思議に思っていたが、町はイタリアのピストイア市と国際交流をしていると聞かされて納得した。山里に来て異国情緒にひたれるというのも、それはまたそれで楽しいかもしれない。

 白川町は観光開発にかなりのポリシーを持って取り組んでいるようだ。町内を「ふれあいの里」「やすらぎの里」「芸能の里」「せせらぎの里」「伝習の里」と大きく五つに分け、それぞれのテーマにふさわしい施設などが造られている。ここを訪れて初めて分かったが、1泊したぐらいではとても回り切れそうにない。

 興味を引いたのは高原の一番奥にあった明治維新史料館。イタリア調で取り組む町に「明治維新」はちょっと意外にも思えたが、岩屋ダム(金山町)に沈む庄屋宅を移築したというこの館内には、高杉晋作や勝海舟など幕末の志士や英傑、公家、文人らの遺墨、絵画、書籍など数百点が整然と展示されていた。ある収集家の寄贈によってできたものだそうで、その一つ一つがなかなか見応えのあるものだった。

 

黒川地区はパイプオルガンの里
めざすは音楽の町、国際交流の町

 白川町とピストイア市が提携するようになったのは、この町でパイプオルガンを作る辻宏さんがいたことからだ。辻さんは日本人として初めて同市にある古い教会のパイプオルガンを修復、これがきっかけとなって交流するようになった。その辻さんの工房が黒川地区にある。

 あいにく辻さんはお留守だった。一般の人でも予約しておけば見学できるそうで、奥様の紀子さんは廃校を利用した工房内を気軽に見せて下さった。中には木材や材料、電動工具などが置かれ、荘厳な音色を奏でるオルガンのイメージとは裏腹に、さながら町工場のような雑然とした雰囲気だった。

 「友人の紹介で1976年に神奈川から引っ越してきました。いま7人で取り組んでいますが、ご覧のように仕事場は殺風景なもんでしょ。一つ一つが手作りで、早くても数カ月、中には5年をかけて作ったのもありました」

 近くの黒川中学校にはここで作られたパイプオルガンがあるそうだ。足を延ばしてみると、校舎もこれまたイタリア風。同窓生たちがプレゼントしたものだそうで、公立中学でパイプオルガンのあるのは全国でもここだけとか。

 「辻さん夫妻の影響が大きいですね。いまでは『音楽の町』『国際交流の町』として知られるようになり、地域の人たちも音楽を通じていろいろなものと積極的にかかわるようになってきました。それに、ここ黒川地区は昔から『東座』を中心にして村歌舞伎の盛んなところでしてね、もともと芸能の里でもあったんです」

 パイプオルガンの置かれた体育館で、校長先生はこう語って下さった。学校の1日は荘厳なオルガンの音色で始まるそうだ。そして、町は「天使の降り立つ邑(むら)」をキャッチフレーズに、パンプオルガンで夢おこしに取り組んでいるのだった。

 

山紫水明の地に、いい湯あり
人気「スポーツスパーランド美濃白川」

 白川町にはもともと温泉があった。ひなびた温泉ではあるが、それだけに俗塵を離れた趣がある。飛騨川の描く景観は一服の清涼剤ともいえ、四季を通じて観光客やつり客に親しまれてきた。

 平成6年秋、その温泉郷にまた一つ新しい魅力が加わった。温泉保養館「スポーツスパーランド美濃白川」がそれだ。平成元年から掘削を始めていたそうだが、こちらには若い人を呼び込もうという意気込みが感じられた。

 旅に出ると温泉が何よりのごちそうである。昨日も宿で十分堪能したが、またまたその気になってくる。こちらは“水着のお風呂”バーデゾーンと“裸のお風呂”スキンゾーンの二つから成っていた。

 気泡湯、運動浴、歩行浴に圧力浴、うたせ湯、寝湯……前者には様々なタイプの風呂が用意されていた。明るく広い館内で、心まではればれとしてくる。パンツをはいているので、何だかプールにでも来ているような感じだ。

 温泉はやっぱり裸に限るという人も多い。もちろん、後者は男湯と女湯に分けられている。露天風呂で出会った親子連れは3日に一度の割で来ているそうで、「ここの国道を通るのが楽しみというドライバーも結構多いですよ」と話してくれるのだった。

 これまで通過するだけだったが、見どころの多い町であるのに感心した。かなり精力的に回ったつもりではあったが、とうとう「伝習の里」と「せせらぎのさと」へは行けずじまい。佐見地区に残る歴史的遺産を集めた「佐見文化財保存記念館」や廃校を利用して作られたという体験施設「見知倉作(みちくさ)館」ものぞいてみたかったのだが……それらはまた次の楽しみとすることにした。

 

[情報]白川町役場
〒509-1105 岐阜県加茂郡白川町河岐715
TEL:05747-2-1311

 

 

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