マイタウン(MyTown)| 一人出版社&ネット古書店 |
岐阜県板取村 |
緑の森と澄んだ水、めざすは日本のスイス あらゆる種類のアウトドアライフが
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仙境に幻の滝を見た!
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墨絵を思わせる雨の日の風景 |
その幻の滝からは水がドードーと音を立てて流れ落ち、初めて来た人ならいつもあるものと思うにちがいない。橋の上から谷底をのぞき見れば足がすくみ、激流が渦巻きながら流れていた。折からの雨に迫力も満点である。
本来ならさらに上流部へハイキングしたいところ。そこには〃本物の〃銚子の滝がある。そしてその向こうがもう福井県とあれば、まだ訪れたことのない人にも、ここ川浦渓谷の秘境ぶりは分かってもらえようか。
「板取」の村名は文字通り「板を取る」ことから名付けられた。特にスギとケヤキは良材として知られ、村の特産の一つに数えられている。実に総面積の98、8%が森林で、それだけに大自然は至る所に息づいていた。
村では早くから観光立村に努めてきた。国道256号で村へ入ったとき、真っ先に歓迎してくれたのはアジサイの可憐な花々だった。この道は「日本の道100選」にも選ばれており、花の道「アジサイロード」はどこまでも続いていた。
やがて国道は郡上八幡へと左折する。その国道に別れを告げ、板取川にそってそのまま直進すると、やがて村の中心部へ。沿道で見かける学校や体育館、はてはバス停までもが、ふんだんに木を使ったヨーロッパ調の建物だ。
「いま村では“板取スイス村”を合言葉として、観光客誘致に積極的に取り組んでいるところです。その最大のセールスポイントが緑豊かな森であり、あるいはまた透き通るようにきれいな清流なのです。これからは中部を代表する避暑地としていよいよ脚光を浴びてくるはずで、そのためにもトータルイメージを確立する必要に迫られてきているんですよ」
途中で立ち寄った役場の、若い職員の弁にも熱がこもっていた。村にはキャンプ場が11カ所あり、その数の多さでは県下第一とのこと。川遊びに魚釣り、バーベキューや森林浴など、大自然の中で様々なアウトドアライフを楽しむことができ、いずれのキャンプ場も人気は上々らしい。
その一つ、川浦谷にある新板取キャンプ場をのぞいてみた。6畳のバンガローが73棟もあり、林間学習にでも来ているのか、中学生の一団でにぎわっていた。あいにくの雨も吹き飛ばすかのように、奥の方からは明るく元気なコーラスも流れてきた。
板取村ご自慢の「二十一世紀の森公園」。この奥の方に、ぜひ見てもらいたいものがある。それは「株杉」という不思議なスギの木で、どうしたらこんな形になるのかと、首を傾げたくなるようなシロモノだ。
蕪山(かぶらやま)には毎年のように登ってきた。公園はその山麓に造られているわけだが、山を降りてきて最初に目撃したときの驚きは、いまでもはっきり覚えている。まるで高坏(たかつき)のような台状の根株も不思議だが、その上からスギの木が10本も20本も生えている様は異様だった。
それも半端なものではない。樹齢は古いものになると4、500年とも言われ、しかも、そうした木があたりに群生してある。この日は一体どのくらいあるのかと数え始めたが、20本近くまで数えてやめてしまった。とても数え切れるような本数ではない。
もちろん、こんな木が群生しているのは、わが国でもここだけだ。かつてハイキングで訪れたとき、みんなで手をつないで測ってみたことがある。一番大きなものは10人集まっても、まだ足りなかった。
そんなスギたちを見ていると、親が子供を必死に支えているようで、何だか身につまされてきた。さすが寄る年波には勝てないのか、朽ちかけてきたものもある。子が成長すればするほど重さが増し、最近ではつっかい棒のお世話になる木も増え始めてきたようだ。
こんなめずらしい木なのに、村ではあまり宣伝していない。踏み荒らされたのでは、元も子もないからだ。それはそれでよしとしたいが、これをご覧の人だけにこっそりお教えする次第。そして、すねかじりしている人はこの木を見て、親の有り難さに感謝してもらいたい。
この村にも温泉が湧いた。板取川温泉「バーデンハウス」。これで冬場の観光客もぐっと増え、村おこしの切り札と期待が高まっている。
板取村小旅行の締めくくりはやっぱり温泉である。ここの泉質は無色透明で、ぬるっとしていることか。のんびり湯につかっていると、おじいさんが話しかけてきた。
「今日は雨降りで少ないけど、いつもはこんなもんじゃない」
「ここはこれから、まだまだよくなる。わが村の中心的な施設に育つよ」
名古屋からわざわざ来たと知って、説明にも力が入ったようだ。役場でも聞いたが、ゆくゆくはここに宿泊施設を造るプランまであるとか。そうなれば10億とか15億とかいう資金も見込まれており、温泉にかける村当局の意気込みが分かるようだ。
旅の疲れをゆっくり癒し、隣接のレストラン「シュトローム」で冷たいビールにのどを潤した。やはりこちらもヨーロッパ調の造りにドイツ語のネーミング。そう言えば、村はアラスカのノースポール市と姉妹提携をしており、国際交流もなかなか盛んなようである。
ふるさと創生資金が呼び水となり、どこも温泉に期待をかけている。その一方、都会では格安のスーパー銭湯がブームとなってきた。21世紀の“泉都”を目指して、自治体間の競争はすでに始まっている。
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