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名古屋弁講座 その29

「くろにえる」

名古屋弁にこんな言葉もあったとは……

 「くろにえる」って分かりますか? つい先日、インターネットのホームページ「ふるさとの方言」の「らくがき横丁」欄に東京の人がこんな書き込みをしていた。「私の生まれた関東では通じません。多分、両親が地方の出身者なので、そちらの言葉かと思うのですが、『普通に使っている』という方がありましたら教えて下さい」。

 これを見た人から早速2、3の反応があった。「和歌山では『にえる』とも言っています」「大分出身の人が使っていました」。方言はその地に住む一人ひとりが先生であり、こういうことを調べるのにインターネットは便利な道具である。

 ぼくが「くろにえる」と初めて出会ったのはもう十数年も前のことだ。ダムに沈む村・岐阜県は徳山村(後に藤橋村に合併)で有志たちによる「ミニ学会」(正式には「徳山村の自然と歴史と文化を語る集い」)が毎年1回開かれており、その会場作りを手伝っていたときだった。柱の角でひざを打った人がしばらくしてからズボンをまくしあげ、「うひゃー、こんなにくろにえてまっとるわー」と言ったのだ。

 くろにえる? 状況から「あざになる」という意味は理解できたが、これがいきなり飛び出していたら、おそらく分からなかったはず。こちらでは「くろじになる」と言っていたし、名詞形で「くろじり」とか「くろじに」などとも言っていた。

 「こっちの方ではそんなこと言っとるの? 初めて聞いたがね」
 「言っとる、言っとる。みんなよー使っとるよ」
 「くろにえるではなく、くろにえができてまった、という言い方もあるよ」

 あのとき、居合わせた人との間で「くろにえる」が話題になった。岐阜のあちこちから集まってきていたが、驚いたことに彼らはみんな知っていた。中には「カンカン照りで雑草などがしなびている状態を『草がくろにえとる』と言う」と教えてくれた人もいた。

 その後、年配者と話がはずむと、よくこの言葉を確かめてみたものだ。すると、尾張の北部の方では結構、使っているという人がいた。平成元年に瀬戸市は「瀬戸弁番付」を作っているが、この「くろにえる」が「青あざになる」として東の前頭二枚目に位置づけられている。

 方言の分布状況を示したものに方言地図という資料があるが、その「あざになる」を見ると「くろにえる」を使う地域は岐阜県全体を埋め尽くし、その周辺の愛知、長野、富山、福井の一部にまで及んでいる。道理でミニ学会のとき、岐阜の人たちが〃共通語〃のように言っていたわけだ。その岐阜県では名詞形の「くろにえ」と同様に「あおにえ」とも言っているらしい。

 その分布図を見ると「くろにえる」を使っているところとしてはこの他に、和歌山県全域とそれに隣接する奈良、三重の一部、四国の愛媛と高知の県境付近、そして大分県と宮崎、熊本の一部となっている。名古屋で一般的に使われているのは「くろじになる」で、これは岩手県などの東北地方と九州などに多い。関東は共通語になっている「あざになる」である。

 おそらく岐阜からも「こっちでも使っているよ」との書き込みがあることだろう。こうしてみると、インターネットは「くろにえる」の疑問をいとも簡単に解決してしまっている。方言を調べるには一番手っ取り早い道具と言える。

 


 

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