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名古屋弁講座 その26

「いろむ」

柿でも肉でも、腐りかけが一番うまいとか

 「まんだよーけ、なっとるなあ……」

 名古屋城の南、外堀町通を通ると、いつも車窓から目をやるところがある。堀端にある一本の柿の木だ。鳥がつつくくらいで、1月も半ばだというのに、いまも鈴なりである。

 この柿の木、柵の内側にあってとりにくい。あまり知られていないようだが、小粒ながら甘柿でうまい。食べられるようになるのは12月の上旬前後くらいか。

 県の図書館に寄った帰り、柵内に入って2、3個失敬した。とっていたら通りかかったオッサンが「うっみゃーきゃあ。しぶにゃーか」と聞いてきた。一つあげると感心し、何と彼は大胆にも木に登ってとりだした。

 それくらいうまいのだ。しかし、いくら頑張ってみたところで、オッサン一人ではとりきれないほどある。今年は当たり年だったようだ。

 「よーいろんどるで、うっみゃーわ。一つあゃーますで食べてみやあ」

 オッサンは通りかかった人にもおすそ分けしていた。筆者もこれを失敬したのは初めてのことではなかった。こう書いてしまったのでは、これからみんながとるようになってしまうかもしれない。

 本当は完熟したいまごろが一番おいしいときなのかもしれない。が、柵に入ってとるには背広では引け目を感じてしまう。ジャンパー姿のいかにもオッサン風のときでないと様にならない。あそこの柿はとって食うんだという気力と、それにふさわしいファッション、そして大通りだけにタイミングがそろわないと、なかなか口にできるものではない。

 柿と言えば、ひどい目にあったことがある。岐阜の山中に生えていたものを一口食べてみたときのこと。色といい形といい、実においしそうに見えたが、そのしぶいこと、しぶいこと。うまそうにいろんでいたのに、道理でサルもとらなかったわけである。

 「いろむ」--名古屋弁で果実などが色づくことを言う。「熟す」「熟れる」「実る」。この「いろむ」はいろいろなものに用いられている。

 「庭のミカンがでゃーぶいろんできた。まーちょっとたったら、あゃーますわ」
 「まんだそのイチゴを食べるのははやー。まっといろんでからにしなかんわ」
 「イネがいろんできたもんで、そろそろ刈らなかん。手伝ってちょーすか」

 こんな調子で使う。実が熟せば何でも「いろむ」だ。

 この言葉は古語に属する。『東海の方言散策』によると「江戸時代の講談本、俳諧、雑俳などにもあるが、今では方言になった。イロムを使うのは中部地区の富山、長野、岐阜、愛知の各県のようであるが、現在は稲、唐辛子、柿など実の類に使われることが多い」とある。

 「ちょっと見んうちに、あんたんとこの娘さん、えー具合にいろんできたねえ」
 「いろむ? どーいうことでゃあ」
 「出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んで。いまごろがちょーど食べごろみてゃーだがね」
 「なにをとろくさゃーこと言っとりゃーす。あんたんとこのかーちゃんの方がよっぽどいろんどるわ。いまにも落ちそう。完熟ばあさん」

 なんのこっちゃ。「いろむ」は人間に対しては用いておりません。

 


 

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