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名古屋弁講座 その25

「かえどり」

信長も「かえどり」が大好きだった!

 「かえどり」は 「かいどり」とも言う。これは川をせき止め、魚を捕る漁法の一つだ。水を掻き出して捕まえる「掻い捕り」がなまって「かえどり」になった。子供のころは夏になるとパンツ一丁でこれに夢中になったものだが、泥まるけで家に帰ると殺生を嫌う父はあまりいい顔しなかった。

 「かえどり」は集団プレーだ。まず魚のいそうなところをねらって川をせき止める。ガキ大将の「下からぼえ(追え)」の指令が出ると、みんな川に飛び込んでぼい上げる。父親に嫌な顔をされることは分かっていても、この魚捕りほど面白いものはなかった。

 「よーし、そこらでやめ−っ」。今度は魚が逃げ出さないよう、手早く下をせき止めた。さあ、これからがお楽しみだ。

 泥まみれになって、バケツなどで水を掻き出す。やがて魚がピチピチ跳ね始める。頃合を見計らって、みんなで一斉につかみ捕りだ。

 「あっ、逃げた。そっちへ行ったぞ」
 「捕まえた。大きい、大きい!」
 「こっちはでっかいナマズだ」
 「いたっ、エビガニにはさまれた」

 こんな原稿を書いていると、子供のころが妙に懐かしく思い出されてくる。井戸水でよく冷やされたスイカ、首を長くして待ったアイスキャンデー売りのおじさん。そのころはセミもうるさいほど鳴いていた。

 「かえどり」から信長を思い出した。あのガキ大将がやらないわけがない。ほれた女のいる生駒屋敷(江南市)へ足繁く通うが、屋敷に出入りする藤吉郎などを引き連れ、近くの川へ「かえどり」に。

 子供のころでも結構いたものだが、そんな昔のことだから面白いほど捕れた。夢中になって遊んでいる若殿を見て「もしも敵方の隠密にでも襲われたら……」と家臣たちは気が気でない。が、当人はそんな心配などお構いなしで、いまや好きな女すらも頭の中にはなかった。

 それに、信長の「かえどり」はスケールも大きかった。何も川でなくて池でやっても「かえどり」だが、彼は大蛇がいるとウワサの立った蛇池(名古屋市西区)でもこれをやっている。近くの百姓たちを総動員、大蛇を生け捕りにしてしまおうとの魂胆だ。

 が、水は七分ほどになってからは、いくらかえどっても減っていかない。業を煮やした信長は脇差を口にくわえて池に飛び込んだ。それでも見つからないと分かると、今度は泳ぎのうまい者を潜らせてみたのだが、さすがの信長もこればかりは捕らまえようがなかった。

 「今度の日曜よー、かえどりやらなかんで、出てちょーよ」
 「ええっ? かえどり!」
 「魚捕りだにゃーぞ。どぶざらえ。まーそろそろやらんと詰まってまうで」

 いまは「かえどり」もできなくなった。やっとできるかと思えば、何と町内のどぶざらえ。こちらの出てくるものといったら、ピニール袋に空き缶、ペットボトル、それに何でこんなところに子供の自転車なんかを放り込むの、まったく。

 


 

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