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名古屋弁講座 その19

「ひりょうず」

形は飛竜の頭? 味は雁の肉! 東と西で大違い

 漢字で書くと「飛竜頭」。これが空を駆けるという、飛竜の頭だとは? 関東で言う「がんもどき」のことである。

 ポルトガル人が大阪だか京都だかへやってきて、豆腐の中にニンジンやギンナンなどを細かく刻んで油で揚げている。それを見た人はよほど不思議な料理に思えたのだろう。

 「すんまへん。それ、なんでんねん」
 「オー、コレネ。ヒリホス」
 「ええっ? もっいっぺん言てもらえまへんやろか」
 「イイデスカ、ヒリホス。ワカリマスカ」

 「ひりょうず」はこの「ヒリホス」(hilhos)から来ている。そして後に「ヒリホス」に「飛竜頭」や「飛竜子」の文字が当てられた。中には「ヒリウス」と聞こえた人もあったとみえて「飛竜臼」と書かれているものもある。

 関西では「ひりょうず」と言っているが、いまでも「ヒリホス」に近い「ひろうす」と言う人も少なくない。これが名古屋に伝わり、こちらも「ひりょうず」あるいは名古屋弁らしくぐっと丸みを帯び「ひりょーず」と言っている。ともに「ヒリホス」語圏であることに変わりはない。

 ところが、である。関東の人は素直ではなかった。

 「ひりょうず? これのどこが竜の頭に似ている」

 首かしげながらも、一口食べてみた。すると思っていたよりもはるかにうまい。似ても似つかぬものだが、大好物の雁の肉を食べているようにも感じられてくる。

 「これはなかなかいける。雁の肉がこんなに手軽にできるとは」
 「なるほど、本当だ。これはうまい。雁の肉にそっくりですよ」

 関西では南蛮渡来の言葉に注目したのに、関東では味覚そのものに関心が集まってしまった。よほどお口に召したとみえる。それでつけられたのが「ひりょうず」ではなく「がんもどき」だったというわけだ。言うまでもなく「もどき」は「似たようなもの」とか「まがいもの」を意味する接尾語である。

 これと逆になってしまったのが「チャーハン」か。先日、大阪へ遊びに行ったとき「チャーハン」を頼んだが、返ってくる言葉はいつも「やきめし」だった。名古屋と言えば中国渡来の「チャーハン」で東京と同じである。

 それはさておき、こちらでも最近は「ひりょうず」を使う人が少なくなってきている。若い人はもっぱら標準語になった「がんもどき」であり、さらに略して「がんも」である。しかし、もともとは「ひりょうず」が元祖であり、こっちも『広辞苑』にちゃんと載っている。

 「なにぃ、おじいちゃん。ひりょーずって?」

 食卓を囲んでいた子供が不思議そうな顔をして聞き返してきた。名古屋弁で「なんですか」というのは「なにぃ」の一言で表し、のどの筋を引きつらせるようにして語尾を上げるでね。「ひりょーず」は知らなくても、孫はすでに名古屋弁を立派に習得してきている。

 「さあ、食べてみやあ。どーだ、うみゃーだろ。これをひりょーずと言うんだぞ」

 また一つ賢くなった。が、彼が大きくなってからも「ひりょーず」を使ってくれるかどうか、これはまったく保証の限りではない。

 


 

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