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名古屋弁講座 その13

「ちんちこちん」

ちんちこちんになってまったで

 風呂へ入ろうとした人が「ちんちこちんだがや」とびっくりしたり、さて一杯お酒をと思うと「あんまりちんちこちんにするなよ」と注文したりする。名古屋弁で湯などが煮えたぎる状態のことを「ちんちこちん」と言っている。

 以前、若い女性から「たまにではあるがポロッと愛敬のある名古屋弁の出たりする彼がとても好きでした」という手紙をもらったことがある。バイトで出会ったとのことだったが、彼の放ったヒット作というのが「ちんちこちんになってまったで」だったそうな。「ちんちこちん」の一言で二人の愛はより煮えたぎったか。

 「ちんちこちん」は単に「ちんちん」とも言っている。冒頭であげた例なら「ちんちんだがや」「ちんちんにするなよ」となる。しかし、この「ちんちん」は「陰茎」を意味することもあるのでご用心。

 話はコロッと変わって、尾張四代藩主吉通の生母「お福の方」。この人は三十五歳で夫の三代藩主綱誠(つななり)を失い、出家して「本寿院」と呼ばれることになるが、爛熟した肉体は「ちんちこちん」にほてって男なしではいられない。〃御畳奉行〃朝日文左衛門は日記『鸚鵡篭中記(おうむろうちゅうき)』の中で次のように書いている。

 「本寿院様、貪淫絶倫也。或は寺へ行きて御宿し、又は昼夜あやつり、狂言にて諸町人、役者等入込み、其の内、御気に入れば誰によらず召して淫戯す」

 彼もこういう話にはよほど興味があったらしく、日記にはそうした「淫戯」ぶりがしばしば登場してくる。藩主吉通もわが母とはいえさすがに困り果て、ついには江戸の尾張藩新屋敷に閉じ込めてしまうが、男を断たれてノイローゼにでもなったのか、文左衛門の日記には「御乱髪なんどにて御屋敷の大もみの木なんどへのぼり玉ふ事有り」などとも書かれている。

 彼の日記にはこうした「なんど」という表現がよく出てくる。当時は「など」を「なんど」と言っていたらしい。そういえば名古屋人は「ん」を付けるのが好きなようで、「のんぼり」とか「へんび」「かんす(蚊)」「おんす(雄)」「めんす(雌)」などとも言っている。

 この本寿院に関して『趨庭雑話(すうていざつわ)』という本はもっと露骨なことを書いている。やっぱり大きい方がよかった? 江戸詰めになる藩士は風呂場で素っ裸にされ、身体検査を受けていたというのである。

 「始めて江戸へ下りし者は時にふれ御湯殿へ召され、女中に命じて裸になし、陰茎の大小を知り給ひ、大なればよろこばせ給ひ、よりより交接し給ふ」

 何かの都合で一度にやってくると、いちいち測っていたのでは面倒だったりして。みんなに体を洗わせてておいて、後ろの方から「ちんちこちん」の湯をザッと流せばすぐ分かる。「アッチッチ」と悲鳴を上げた者がおメガネにかなうのではなかろうか。

 いや、これは筆者の勝手な想像だけど。それにして、もえらい奥方がいたものである。

 「ちんちん」よりも「ちんちこちん」の方がどちらかというと熱い感じが出ている。また、二つの意味があった「ちんちん」も、アクセントが違うので、話していて名古屋人が間違えるようなことはない。ご安心あれ。

 


 

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