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名古屋弁講座 その10

「ちょる」

 

「やっちょる」「言っちょる」「聞いちょる」

 お盆をはさんで2週間、四国一周の自転車旅行に行ってきた。出発前は「果たして体が持つか」と不安だったが、結果は意外にも自転車の方にガタが来てしまった。現金なもので人間、遊びとなると元気になれるものらしい。

 高松に着いて初めて知ったが、四国は四つの国から成るので「四国」だとか。当たり前と言えば当たり前だが、愛知にしろ岐阜や三重にしろ、かつての国がそのまま県になったわけではない。ところが四国は神話の昔から? 讃岐(香川県)、阿波(徳島県)、土佐(高知県)、伊予(愛媛県)の四つでずっーときているそうである。

 「行くけん」「そうじゃけん」などの「けん」を聞くと、ぼくは真っ先に広島弁を思い出してしまう。これは広島出身の友人がいたことにもよるが、面白いことに、四国はどこへ行ってもこの「けん」が氾濫していた。タモリがかつて名古屋弁を「みゃあみゃあ、みゃあみゃあ、ネコが鳴いているみたい」と言ってくれたが、その伝で言えば「けんけん、けんけん、キツネが鳴いているみたい」とでもなるか。

 清流で知られる四万十川は全長約200キロ、吉野川を上回り四国で一番長い川である。その源流から河口までを自転車で下ったが、河口の中村市では「けん」とともに「ちょる」という言葉をよく耳にした。この「ちょる」が気になったのは名古屋市内で聞いたことはないものの、尾張北部、特に江南や小牧、春日井にかけた一帯でちょくちょく耳にすることができるからだ。

 喫茶店でコーヒーを飲んでいたら、20代後半とおぼしき女性が自転車の空気入れを借りに来た。ママは「奥に置いちょるけん」と言い、やがて返しにきた娘さんは「ここに置いちょっていい」と確認を求めた。この「ちょる」はどのあたりまで使われているか不明だが、ぼくの感じでは中村ばかりで気になったので、そんなに広くは分布していないかもしれない。

 さて、こちらでの「ちょる」の話だが、最初にこれを聞いたときはとても地元の言葉とは思えなかった。子供のころから耳にしたことがなかったからだ。たまたまよく使う人と知り合いになり、「どこの出身か」と聞くと「地元も地元、布袋(江南市)だ」とのこと。これがきっかけとなり「ちょる」に関心を持つようになった。

 「あの人はめっちゃくちゃ言っちょる。いちいち付き合っちょれんわ」  「まーあきらめた。好きなよーにやっちょくれ」

 こんなふうに使ったりするが、多分、四国の中村でも同じかと思われる。聞いていると、この「ちょる」には愛敬みたいなものが感じられてくる。しかし、いまとなってはこれを口にする人は少なく、年齢的に見ると60歳以上といったところか(それも男性に多い)。

 映画やドラマなどで、かつての“オイコラ”警官が偉そうにヒゲを生やし、「貴様ら、何をやっちょるか」「本官をなめちょるか」などと威張ってみせるシーンがあったりする。そんな場面にぴったりの言葉だと思っていたが、現実に「ちょる」は地元でも生きているわけだ。ただ、違っているのはそんな高圧的な態度で使うのではなく、ちょっとひょうきんな響きはあるものの、やさしく愛敬のある言葉として。

[蛇足]四国旅行の模様は『いざ、四国お遍路!中年ぼろチャリひとり旅』と題して郷土出版社から本にしていただきました。いっぺん読んだってちょ、えか。

 


 

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