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名古屋弁講座 その9

「ぎゃふんとこく」

 

「こく」が付くと、立派な名古屋弁に

 暇つぶしに入ったマンガ喫茶で『ナニワ金融道』を読み直した。ご存じ! 全19巻、合計1000万部突破の大ベストセラー。先ごろ出た単行本『ナニワ青春道・完結編』の中で筆者は執筆に終止符を打った経緯やら政治、経済、恋愛などについて書いているが、やはりマンガほどの迫力や面白さはなかった。

 マンガの中に「きゃんと言わせてこい」というフレーズがあった。大阪弁のマンガでありながら、「きゃん」とはまたかわいらしい。名古屋弁なら「ぎゃふん」と言うとこになるだろう。

 あれを読んでから、妙に「きゃん」が気になった。大阪弁では本当に「きゃんと言わせる」と言うのだろうか。そんな思いが脳裏を離れなかったが、『完結編』の中で「きゃつらをギャフンといわせたろうやないか」と書かれている個所に出会い、やっぱり同じだったのかとそれまでの疑問が氷解した。

 『広辞苑』を引くと「ぎゃふん」はちゃんと載っており、「言い返すことのできないほどに完全に言い負かされるさま。『−−と言わせる』」と解説されている。となると、この言葉は方言と言うよりも、むしろ共通語になっているとみた方がいい。

 ところがどっこい、名古屋弁にはこうした降参した様子を表すのに「ぎゃふんとこいた」という表現になる。この「こいた」が付くと、いかにも名古屋弁らしいなる。「うそをこいた」「往生こいた」、さらには「へをこいた」など、「こく」が付く言葉は「びっくりこく」ほど多いのである。

 山田秋衛編『名古屋言葉辞典』は「ぎゃふんとこいた」を取り上げ、「悪い犬をなぐりつけた形容のことばかと思われる。相手の急所をついて降参させたとか、悲鳴をあげさせたとかの象(かた)ちで、コイタは名古屋ことば、極めて品の悪い一つである」とある。犬にしてみれば、先ほどの「きゃん」ぐらいならまだ蹴られ程度ですむだろうけど、「ぎゃふん」となると踏んずけられてグウの音も出ないほどの痛手となるか。

 「あいつよー、ぎゃーつくぎゃーつく言っとったけど、利さ(とっさ)が一こと言わっせたらぎゃふんとこきゃがって、あれからは何にもよー言わんよーになってまったがや」

 彼にとって利さなる人物はよほどの恩人だったのか、あるいはまた、山田さんの言う「急所」を握っている人だったのだろうか。ついでに、いま出た「ぎゃーつくぎゃーつく」も名古屋弁であり、うるさく不平や文句を言うときなどに用いられる。いかにも騒々しい感じの出ている言葉だが、それでいて発言の重さや効果のほどはあまりない。

 「勉強せよ、勉強せよと言っとったら、いかんがや。こにゃーご息子に『お父ちゃんは子供のころ、ちゃんとしとったの』と言われてまって、こっちがぎゃふんとこいちゃったがね」

 「ぎゃふんとこく」は言わせるばかりではない。このように自分に対して言うこともあったりする。言わせるにしろ言うにしろ、これを使われたら、その人はもうお手上げということである。

 マンガの『ナニワ金融道』を読んでいて「ぎゃふんとこく」という名古屋弁を思い出した。あなた、最近「ぎゃふんとこいた」あるいは「こかせた」ことありますか?

 


 

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