マイタウン(MyTown)| 愛知の本専門古書店
マイタウン|東海地方(名古屋・愛知・岐阜・三重・静岡)の郷土史本(新本・古本)専門店マイタウン|東海地方(名古屋・愛知・岐阜・三重・静岡)の郷土史本(新本・古本)専門店

名古屋弁講座 その8

「えらまつ」

 

 一体全体、何様のつもりかっ

 偉い松? どこがどうエライか知らんけど「えらまつ」という名古屋弁がある。むろん、松のことではない。

 その意味としては「えらいさま」とか「高慢な人」「自信家」など。「偉い」の「えら」があっても誉め言葉ではなく、非難とか軽蔑の意が含まれている。人たるもの、陰で「えらまつ」と言われないように注意しなくてはいけない。

 「あの人はえらまつだで、自分が中心になって動いとらんと、すぐ怒ってまわっせるわ」

 老人会で趣味のサークルができたけど、大将になれなかったもんで、分派を作ってしまったそうな。大将が2人もできてまって、その他大勢の人はどっちへ行ったらいいのか、もうわやだわ。そういえば、最近のプロレスも「えらまつ」ばっかり出てきて、10いくつも団体があり、何が何だかさっぱり分っかれせん。

 「後からひゃーてござったのに、いってゃー、何様のつもりでおらっせる」

 よく威張っている人のことを「何様のつもり」と非難するけど、ひょっとすると当の本人は「殿様のつもり」でいるかもしれない。困ったものだ。名古屋はなれ合ったナーナーの地だから、こういう人は嫌われる。

 こうしたことから来ているのか、「えらまつ」には「煮ても焼いても食えぬ人」とか「どうにもならぬ人」といった意味もある。多少けむたがられても、殿様になれればまだいい。が、こちらはペーペーで、「えら」が付いていてもそんなに偉いというわけではない。

 「あのじん(人)はえらまつだで、わしが話持ってっても聞いてくれるかしゃん。わりぃーけどおみゃーさん、頼むわ」

 「えらまつ」を相手にした交渉ごとはやっかいである。一筋縄ではいかない。できることなら、こんな人とはかかわり合いを持ちたくない。

 以上、「えらまつ」はこんなふうにして使われているが、それでも言葉の意味は使う人によってかなりの開きがある。中には「けちんぼ」とか「がめつい人」の意味でこれを使っている人もいたりする。だから一口に「えらまつ」と言われても、前後の関係で何を意味しているかを判断しなくてはならない。

 ところで、この「えらまつ」、どこから来ているのか。名古屋地方独特の言葉のようだが、ひょっとすると松五郎とか松市とかといった態度のデカイ男がいたとでも言うのだろうか。

 山田秋衛編『名古屋言葉辞典』を見ると、「エラマツは人間がガメツク一筋縄ではどうにもできぬ人をいう。昔、松太郎という人がこの標本のような人であったとこからこの詞がでたらしく、名古屋全体に通用する」とある。やっぱりと言うか……本当かいな。

 でも、松太郎ってどこの、どんな人なのか。確か「ハダカのハチベ」もそうだったけど、八兵衛はまだそれなりに氏素性が分かっていた。

 「あの人があゃーて(相手)ではいかんわ、えらまつさまだでなも」

 ときとして「えらまつ」に「さま」を付けて話すお年寄りもいたりする。腹の中では高慢ちきで面白くないと思ってはいても、それなりに社会的に地位の高い人だと、

ついつい「様」を付けたくなってくる。そんな屈折した気持ちも秘められていたりする「えらまつ」であった。

 


 

上の閉じるボタンを押すと、「名古屋弁講座」のトップページが表示されているはずです。表示されていない場合や直接このページへ訪問された場合は、ここをクリックして「名古屋弁講座」のトップページを表示されるか、下の「マイタウンのトップページへ」をクリックして下さい。

 

マイタウンのトップページへ

愛知の本専門古書店
MyTown(マイタウン)
E-Mail:こちら
〒453-0012 名古屋市中村区井深町1-1(新幹線高架下)
TEL:052-453-5023 FAX:0586-73-5514
無断転載不可/誤字脱字等あったら御免