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名古屋弁講座 その5

「りょうおる」

 

料理するにも仕方はいろいろ!?

 「料理する」ことを名古屋弁で「りょうおる」、あるいは「りょうおったる」と言う。料理の仕方もどちらかというと生やさしいものではなく、魚をさばくなど、かなりあらけないやり方のときに用いる。その意味では「料理する」と書いたが「解体する」とでもした方がいいほどだ。

 「ええっ、こんな大きな魚、いただいてきたの。でも、私こわいわ」

 「よし、そんなら貸してみやあ。おれがりょーおったるに」

 いま、魚のさばけない若い人が増えてきている。大体、包丁のない家庭があるというのだから、あきれてしまう。道理で刻んだキャベツなどがコンビニに置かれていたりするわけだ。

 奥さんはまな板の上に魚を置いてみたものの、口から出るのはやはり「私こわいわ」だった。そのくせ食べることとなると、結構グルメ志向だったりするんだよね。こんなことを言っている人に限って。

 尾頭付きと言えば願ってもないごちそうと言えそうだが、最近の若い女性にはこれも嫌われているとか。そんな立派な魚を出されると、頭の部分にハンカチを置いて食べる人までいるらしい。訳を聞いてみると「目が私をにらんでいる」なんておっしゃったりする。

 なるほど、そう言われてみると、分からないでもない。鑑賞用に飼っている金魚だって、よく見ると、決してかわいい顔をしているわけではないもんね。

 「りょうおる」で思い出すのは子供のころのことだ。珍客があると飼っていたニワトリをつぶし(殺し)、ひきずりなどにしてもてなすこともあった。裏庭でこっそりやるそれがまさに「りょうおる」であり、かわいそうではあったが、久しぶりにごちそうにありつけると子供ながらに喜んだものだ。

 このように名古屋弁の「りょうおる」「りょうおったる」はなかなか勇ましい言葉である。これが魚やニワトリに向けられているうちはまだいいが、ときには人間に対して用いられたりもする。いや、いくら何でも人体の解剖まではしないけど(いや先日、実際にしちゃって、捕まった人もいたよね)、「こらしめる」とか「折檻する」とかいう意味で、だ。

 「おとーさん、私がなんべん注意しても言うこと聞けせんで、ひとこと言ったってちょう」

 「そりゃいかんなあ。よし、おれがいっぺんりょーおったる」

 お父さんの口から「りょうおったる」が出たのでは、鯱男クンもかなり手荒くしかられるはずだ。この言葉にはそれぐらいのパワーが秘められている。さあ、どうする−−お父さんと鯱男クン。

 「りょうおる」はこのように高圧的に出て、相手をおどすときに使うと便利だ。が、それだけにちょっと品が悪く、職場など公式の場で用いられることはまずない。せいぜいいたずらっ子をしかるときとか、逆にヤクザな人などが相手を威嚇するために意識的に使うくらいか。

 「料理する」にしろ「こらしめる」にしろ、この「りょうおる」には迫力がある。大きな課題に挑戦するときなど、これを用いれば格好よく見えるかも。となると、職場で応用してみる価値はある。

 「なにぃ、みんながやってみたけどできんのか。よし、見とってみやあ。そんなもの、わしが簡単にりょうおったるに」

 このひとことで必殺仕事人の風格が漂ってくるではないか。あなたを見る周りの目がきっと違ってきたはず。ね、どことなく敬意に満ちあふれているでしょ。

 


 

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