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名古屋弁講座 その1

「でら」

 

若い人に「でらうけ」の新しい名古屋弁

 この「でら」は新しくできた名古屋弁だ。「立派な」とか「ものすごく」といった意味を持つ言葉に「えらい」があるが、これに強調の「ど」が付くと「どえらい」になり、名古屋ではさらにオーバーに「でえーりゃー」と発音される。「えらい」「どえらい」「でえーりゃー」は英語でいうところの「GREAT」「GREATER」「GREATEST」のような関係にある。

 この「えらい」には「苦しい」とか「つらい」「疲れた」とかいった意味もある。大阪弁で言う「しんどい」に当たるもので、こっちの「えらい」はまだ標準語になっていない。「どえらいえらい」と言われてそんなに立派な人間なのかと思ったら大間違い、「非常に苦しい」とか「大変疲れた」と言っているに過ぎないのである。

 ぼくはマラソン大会にしばしば参加するが、走っていると名古屋から来た人はすぐ分かる。みんな「えりゃー」「えりゃー」と言いながら坂などを登っている。そしてぼくの口から出る言葉も、やっぱり「どえりゃーえりゃーでかんわ」といったボヤキだったりするのである。

 「でら」は「えらい」の比較級および最上級の「どえらい」あるいは「でえーりゃー」が略されてできたものだ。縮めることによって、ちょっぴりではあるが田舎臭さも抜ける。若い人たちの間でよく使われるようになったのも、案外、この洗練された感じが受けているのかもしれない。

 これとは別に、彼らは何かにつけて「超」を付けるたがる。「超かっこいい」「超好き」「超きれい」などと言っているが、この「超」の名古屋バージョンに当たるのが「でら」ということもできる。ひところよく使われた「スーパー」みたいなものである。

 「でら」を流行語にしたのは、やはり何と言ってもキリンの売り出した地域限定ビール「でらうま」だったろう。「でらうま」は名古屋弁の「どえらい(あるいはでえーりゃー)うみゃあ」の略だ。ラベルに馬のような絵が描かれてはいるが、名古屋人なら「でらうま」を「でっかい馬」あるいは「立派な馬」と思う人はまずあるまい。

 このみそ煮込み風濃い口ビールに、名古屋人はすっかりならされてしまった。グループなどで旅行に行くと、当然のことながら出てくるビールのアルコール度は低い(というよりも、それがニッポンの標準だ)。だから一口飲んでは「いかんなあ、しゃびしゃびだで」「でらうまはにゃーか、でらうまは」などと言い出す人が必ず1人や2人はいたりするものである。

 「うちの部長ね、ここだけの話、でらはげなのよ」

 そんな陰口をたたけるのも若いうちだけのこと。人間、年をとればはげるか白くなのかのどちらかだ。この「でら」は「はげている」に結び付いてできたものだが、あまり略されると他の者には意味が分からず、それだけに「でら」はテンポある会話を楽しむ仲間内言葉としても重宝がられていたりする。

 「“でら”は名古屋弁の流行語大賞ものだよ、なあ……」

 「でらうま」を飲みながら、そんなことを考えていた。考えながら新聞をペラペラやっていると、「いまなら笑える、でらむか体験」の大見出しが目に飛び込んできた。「つづってすっきり」「大賞贈り条例PR」−−。

 「でらむか」は「ものすごくむかつく」の意だが、西春町(愛知県)もユーモアあふれるネーミングを付けたものだ。同町は空き缶などのポイ捨てや犬猫のフン害、野焼きの防止を目的とする条例を制定したが、これを機に全国から「でらむか」体験を募集してその優秀作に賞金を贈ることにした、というのだ。あなたも日ごろ体験するむかむかした話を書いて送れば、ひょっとすると十万円の「でらむか」大賞がもらえるかも?

 


 

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