岐阜県揖斐郡徳山村は美濃の北西端にある、木曽三川の一つ揖斐川最上流部の村である。周囲を冠山、若丸山、蕎麦粒山など１２００メートル級の山々に囲まれ、北東端には能郷白山がそびえる。

　村は八つの集落、約５００戸から成る。揖斐川本流を東谷と呼ぶが、この東谷には奥から塚、櫨原（はぜはら）、山手、本郷、上開田（かみかいでん）、下開田（しもかいでん）の５集落が、上開田で東谷と合流する西谷には門入（かどにゅう）、戸入（とにゅう）の集落が並ぶ。

　揖斐川に建設される徳山ダムは治水、利水、発電のための多目的ダムである。堰堤（えんてい）の高さは１６１メートル、長さ４２０メートル。総貯水量６億６０００万トン、有効貯水量約３億５０００万トンで、岩石を積み重ねて造るロックフィルダムとしては全国最大。完成すれば諏訪湖の大きさを上回り、門入を除く全村が水没する。