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『将軍毒殺』全3巻を出し終えて
 ー■将軍毒殺―実録・名古屋騒動
宗春・宗睦を中心にした尾張藩の通史

 この『将軍毒殺』の舞台は尾張九代藩主徳川宗睦(むねちか)のころである。宗睦は身分によらず人材を登用し、藩政改革を強力に推し進めた。後に「尾張藩中興の祖」と言われたほどの人物だが、ここでは「名君」ならぬ「迷君」として登場してくる。

 人間、100%善人という人はいないし、100%悪人という人もいない。善悪の比重により、善人と讃えられ、あるいは悪人と評価される。後世「中興の祖」と言われたほどの宗睦も、ここでは悪い面をさらけ出してしまった。

 話の中心にしたのは著者不詳の『当世名古屋元結』という本である。当店主宰の「古文書に親しむ会」でこれをテキストにしたが、こんなに面白い話があったのかと感心させられたものだ。新聞連載の話を持ちかけられたとき、迷わずこれを主軸にしてやろうと決めた。

 同書には事件と別に、当時の政治や社会の状況を知る有益な場面も多く登場してくる。将軍を毒殺するために江戸城中へ刺客を送り込むのだが、その台所係になるには株が必要になるというのだ。また、名古屋城の大奥では呪殺の密談が交わされ、のろい殺す方法やそれをはね返すのろい返しの法なども出てくる。このころ、実際に名古屋城内の金蔵が破られるという事件も起きていた。

 九代宗睦の時代は七代宗春の反動から厳しい倹約下にあった。宗睦の治世はいわば「享保の改革」を推進した吉宗の尾張版といった感じで、それだけにこの時代を生きた人々は宗春のころがよけいに輝いて懐かしく思い出されていたはず。『将軍毒殺』の企ては宗睦の暗い社会のもとで起きることになるが、それと対比させるように宗春の記述には特に力を注いだ。

 本書では事件に関わる宗睦を語りながら、その実、宗春を浮かび上がらせている。宗春となるとその治世の全盛期が中心になりがちで、蟄居以後のことはあまり重要視されてこなかった。宗春の研究は多くの専門家らによってなされてきたが、本書では蟄居後の宗春を特に重要視し、かなりのレベルにまで到達できたのではないかと密かに思っている。

 宗睦の後継者と見られていた治休も、この本ではやがて毒殺されてしまう。高須藩から迎えた期待の治行も、なぜか就任前に亡くなっている。これで藩祖義直以来の血統は途絶え、十代尾張藩主の座に就いたのは吉宗の血を引く斉朝だった。以降、尾張藩は四代約半世紀にわたり、幕府からの天下り藩主を受け入れることになる。

 第三部はその斉朝が宗春の亡霊に悩まされることから始まる。宗春が怨霊となって襲いかかるのを最も恐れていたのが当の吉宗だった。そのため墓に金網をかけさせたほどだが、その心配が現実として現れてくることになった。

 本書は藩主では宗睦と宗春を中心にして書いている。しかし、その前後にも触れており、尾張藩全体の歴史を知る通史にもなっている。完結した全巻を読んでいただけたら、楽しみながらかなりの歴史通になれるのではないか。

 

→歴史探訪・徳川宗春「名古屋城編」へ



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