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■私の歩んできた道
一、水谷氏と出会い、幕末史に傾倒

 名古屋駅に近いJR新幹線高架下のブックショップマイタウンは名古屋の郷土史専門の古書店として異色・特異な存在である。店主の舟橋武志さんは地元新聞社で編集と取材などに活躍された方で、郷土史家としても知られている。

 筆者が最初にお目にかかったのは、確か幕末から昭和初期の2・26事件で尾張出身の渡辺錠太郎陸軍大将が殺害されるまでの尾張史に関する三部作の小冊子をまとめた前後であった。新書判のような小さなサイズの三冊を店頭に置いていただいた。

 これはエピソード集のような簡略な内容だったので物足りなく、改めて相当の紙数の本に書き直した。舟橋さんはこの改作の編集と出版に当たり、原稿の段階から筆者に色々なご教示と励ましを与えられ、以来、親しくなり大変お世話になっている。

 筆者が幕末の尾張藩について関心を抱いた端緒はこの舟橋さんではなく、まったく偶然の別の出会いだった。名古屋市中区長で郷土史家として有名だった水谷盛光氏(当時は名古屋市住宅課長)と、法務省主催の会議で席が隣り合わせになったことから始まった。

 筆者の幕末史の知識と言えば戦前の大作、徳富蘇峰の『近世日本国民史』で、薩摩長州等を主体とする長大な賛歌の中で、断片的な尾張藩に関する記事をかじっただけだった。戦後は流行らない大作を名古屋市鶴舞中央図書館から借り出し、こつこつと読んだ。史観は違っても、維新史の研究には必読の資料かと思った。

 水谷氏からは会議の休憩時間に、尾張藩のクーデター「青松葉事件」についての筆者の問いかけに対し、熱心なご教示を受けた。後日、水谷氏は『尾張徳川家明治維新内紛秘史考説』を出版、その祝賀会に筆者も招待された。

 立食パーティーかと思ったら、招待者全員は机上の名札に従い着席するティーパーティーだった。名古屋市史編纂のお歴々からご高齢ご年輩の学者が大半で盛観だった。

 祝賀会には当時の杉戸名古屋市長等も出席。司会進行はCBCの女性アナウンサーというもので、筆者はその盛大なことに驚いた。出席者の名簿と手みやげに配られた著書をいただいて帰った。あの時の出席者で最年少だったのは筆者と女性アナ氏で、あの錚々たる方々はほとんど他界されたと推察している。

 その後は仕事が忙しく、中区役所は筆者の勤務先のビルのすぐそばだったにもかかわらず、水谷区長にご挨拶する機会もなく、退職後にいつかはと思いながら、時を過ごしてしまった。水谷さんの本を何度か読み返し、ノートを作るだけで、再び拝顔する機会を逃した。

二、紀氏から教えられたもの

 在職中から筆者が取り組んだのは、日本海軍の戦史であった。水谷氏に出会う前より、防衛庁防衛研究所から100巻を超える前大戦の公刊戦史叢書が出され、それを全巻購入して読むのに忙しかった。

 当時は旧陸海軍幹部の日記や回想録、第二次大戦の英独の将軍の回想録、チャーチル英首相の日記などが翻訳刊行され、帰宅後は読書に忙しかった。筆者の戦史研究は前大戦に費やされ、なかでも太平洋戦争の主役である日本海軍に集中した。

 資料閲覧のため何度となく防衛庁防衛研究所戦史部を訪ねるようになり、戦史編纂官の後藤新八郎氏(海軍兵学校生徒、海自一佐)と図書室の史料係長小山健二氏(故人)には一方ならぬお世話になった。

 この頃、海軍史研究家紀脩一郎氏(故人、杉並区、満鉄社員、東京都嘱託見本市担当、美濃部知事を諫め、昇級と退職金なしの冷遇を受け、親友の森繁久弥氏が憤慨していた)とお付き合いするようになった。紀氏から戦史研究の取材は一流の人物を第一に考えろと訓戒された。

 ある時、出張帰りの休日に訪問したら、これから行く陸上自衛隊幕僚長杉田一次陸将(元大本営参謀、陸軍大佐)の訪問に同行しろとなった。何でも遠慮することなく質問しろと言われ、ガダルカナル島での陸軍第十七軍司令部の逼迫した生活について尋ねた。

 杉田陸将は気さくに応じられ、雨でびしょ濡れの中で幾日も起居し、あと数日離任が遅れていたらあそこで骨になっていた、と語られた。戦場の過酷な状態をずばり簡潔に語る高官は後にも先にもなかった。(本文は書き出しから)

 

も・く・じ

    • 一、 水谷氏と出会い、幕末史に傾倒
    • 二、 紀氏から教えられたもの
    • 三、 早期退職し、介護の傍らに研究
    • 四、 多くの方々から親切な声援
    • 五、 軍医官らの回想に注目
    • 六、 関係者らの反応を執筆の力に
    • 七、 再考したい幕末・維新の尾張史観
    • 八、 がん宣告後も支援で執筆の日々

 


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