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■クロパトキン著「日本陸軍秘密研究書」

 本文書『鹵獲(ろかく)書譯文』は日露戦争の際に、敵将クロパトキンが前線の将校に配布した日本軍への対応策、いわばマニュアル本とも言うべきものである。「鹵獲」とは「敵からの分捕り」を意味する言葉。これが訳された「明治三十八年五月十四日」という日付から判断すると、奉天開戦で露軍が敗退した後、第四軍(野津将軍)に鹵獲された文書と知れる。

 この文書はクロパトキンにより1904年4月15日に出された。同年2月に開戦されたものの、本格的な戦争がまだ始まっていない時期である。

 日本陸軍に対する評価としては、(1)西欧的に改造して間もないのに、軍隊的精神において優れたものがあり、それが日清戦争で発揮されたこと、(2)特に将軍に有能な人物――例えばとして大山元帥、この文章を鹵獲した野津将軍を挙げていること、が特筆される。以下、注目すべき記事を列記すれば下の如くである。

◎騎兵の動作は取るに足らない。
◎一度立てた目的は成し遂げるまでやめない。
◎電信、偵察に技能を有する。
◎陣地を迅速に築く。
◎軍紀は国民与論の愛国心に支えられて確実である。

 また、薄弱の面を以下のように指摘している。

◎西欧的機関が表面的にしか理解されていなくて、内面化するまでに至っていない。
◎無能な老将校が存在する。
◎物資の搬送は人力が中心であり、補給に著しい弱点がある。
◎日本軍には忍耐力が欠けていること。例えば野津将軍の部隊は4カ月間に戦死者900人、負傷者1500人を出し、患者は1万8000人にも達していること。
◎朝食を取らないと能力が発揮できない。
◎部隊長は一つの決定をするまでに熟考・熟慮するので、急激な変化に対応できない。
◎初戦に勝つと元気が出る傾向にある。

そして本文書後、クロパトキン将軍から左記のような文書(訓令)が出された。

1、日本軍に対して最も効力があるのは夜襲に若くはない。但し、夜襲を行ふには成るべく少数づつ兵を動かし、陰に大部隊を集め強襲して敵の陣地を奪ふのである。時期は即ち払暁に近く、朝霧を利用するのは最も便。

2、日本軍を追撃するには両側に山脈の迫れる斜面を注意せよ。勢に乗じて深入すれば其両側より挟撃せられ不意の損害を招くことある、云々(『日露戦争実記』第四拾編)
また、遼陽会戦の後、将校に日本軍の長所と弱点、それに対する措置を訓示したことが知られている(『日露戦争実記』第四拾壱編)

 クロパトキンはかつて来日したこともあり、日本を知り過ぎた故の敗北と言えなくもない。本文書の価値は太平洋戦争まで続いた日本軍(日本人)の弱点を分析している点であり、特に戦死者のほとんどが餓死者であった先の大戦の事実はクロパトキンの認識力の確かさを証明しているのではなかろうか。

 後半はトルコ戦への反省から成っている。このトルコから日本という、近代文明の兵器による初めての衝突(大戦)という点で、日露戦争は特筆すべき面があり、この文章の価値も存在するものと思われる。そして、今日もなお有効なロシア人から見た“日本人論”としても価値を失っていない。  鬼頭勝之(「はじめに」より)

 

 

 


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