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■尾張藩幕末武家屋敷図―付・下級士族名簿

幕末の名古屋城下を知る新たな地図帳

 住宅地図を作る人はまず現地に足を運び、道路をもとにして住宅を一軒一軒書き込んでいくことから始める。この本の作者である花房馬橋という人物は一体どんな人だったのだろうか。異常なほどの“町オタク”で、訪ね歩いては書き上げていったのかもしれない。

 道路を中心にして家々を描き、短冊形の懐中物とした点も面白い。いまで言うなら、さしずめ「ポケット版」といったところか。しかも、各頁には狭い地域がアップで描かれており、見やすく読みやすいものとなっている。

 住人の名の横には「○」とか「○五●」「二●」などといった符号も記されている。○印は100石、●印は10石で、いま挙げたものなら「100石」「150石」「20石」ということになる(その他、万は□、千は△で示されている)。原題に付けられていたように、まさに「高付」の地図というわけである。

 本書の最後に「嘉永六年丑極月出来」とある。作者花房馬橋は最終確認をしようと寒風をもものともせず、師走の町を走り回っていたのかと想像してみるのも面白い。そして、名も知られずにいた下々の武士たちがこれによって浮かび上がってきた意義にも大きなものがある。

 下級武士の翻刻にあたっては「古文書に親しむ会」でご指導いただいている鬼頭勝之先生にお骨折りいただいた。くせのある小さな字で大変な作業となったが、懸命のご努力でそのほとんどを読み解くことができた。名を残せた人たちも下級とはいえ、喜んでいてくれるにちがいない。

 彼らの住む場所について見ても興味深いものがある。杉村とか田幡村・富士見など、武家屋敷から離れたところに住んでいる者も多い。また、町名にもある「ほふろく町」「蛤横町」「幸ゑき長屋」「おからねこ」など、情緒あふれる呼び名もある。

 本書の復刻によってお手元でまた一つ、名古屋城下を概観していただくことが可能になった。先に「尾張藩士録」を復刻した際、「わが家は侍の出と聞かされてきたが、その名が載っていない」などとのご指摘もあったが、そうした人たちの先祖もひょっとするとこの中に出てきているかもしれない。本書をいっそう“深読み”することにより、研究の進むことを願っている。

B5判・210頁・7000円+税

 


 


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