マイタウン(MyTown)| 一人出版社&ネット古書店 |
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「御殿はどこじゃ」――毎年花の4月、名古屋の中心街を練り歩く春姫道中の終盤、城に着いた春姫が跡形もない本丸御殿跡を眺めて、嘆き悲しむ台詞である。 「愛・地球博」のあとも依然ゲンキのいい名古屋。名古屋港の総貨物取扱量はダントツの日本一をつづけ、ノッポビルの建設競争が展開される名古屋駅の周辺では、公示地価の上昇率が東京都心を抜いて、これも日本一だという。「それでは、ご当地の文化遺産もさぞや立派に保存・復元されて……」と皮肉られると、ハタと頭を抱え込んでしまう。
そうは言っても、「ではその御殿で最初に暮らした初代尾張藩の藩主徳川義直や、その正室春姫のことを知っていますか」と訊ねられると、この質問にもきっとハタと困ってしまう名古屋市民が多いことであろう。 それでは恥かしい――そんな思いから小説風の拙い筆を取ったのが、この本である。一読していただければ、少なくとも春姫さまについては、一応の知識は得ていただけるはずである。(「あとがき」から、藤澤茂弘) |