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■めざすは桶狭間!織田信長が駆け抜けた道
さあ歩こう!織田信長の駆け抜けた道

 歴史ファンにとって合戦の舞台となった城砦(じょうさい)や古戦場は大きな魅力になっている。そこに居合わせた軍勢はどのように動いたのか、将兵らは何を考えていたのか、そして後世の人たちはその戦いぶりをどう見てきたのか……現場に立っていろいろ夢想してみるのは、楽しくも面白くもある。

 桶狭間の合戦は数では絶対的に劣る織田勢が大軍の今川勢を奇跡的に破った戦いである。それだけにここへ至るまでの過程に多くの謎を残し、それがまた合戦を考える上で魅力の一つにもなっている。義元の討死した場所が二か所にできてしまったのも、これまたわれわれの興味を刺激してくれたりもする。

 小社では先ごろ『証義・桶狭間の戦い』という本を出した。著者の尾畑太三さんはその桶狭間にお住まいで、多くの史料や地元ならではの情報も駆使し、これまでにない桶狭間論を展開された。幸い、関心ある多くの方々から注目され、従来からの桶狭間論に一石を投ずることになった。

 この合戦の中でも最大の謎は、織田勢が桶狭間で休息中の義元の陣所まで、どうやって突き進んでいったかである。これについては研究者らによって様々なルートが出されているが、いまだに決定的と言えるものがない。この課題に対しても尾畑さんは『信長公記』にある「山際」や「東に向て」などを解明し、現地にお住まいの地の利を生かすなどして、これまでにないものを提唱されている。

 『証義・桶狭間の戦い』は合戦全般にわたる研究書だったが、本書はそれに添って信長の駆け抜けた道をたどるための案内書である。ガイド役はもちろん著者の尾畑さん。現地を歩いてみれば、同書に書かれていることを“体感”でき、その内容をより一層詳細に理解することができるにちがいない。それでは早速、出発することにしよう。(「はじめに」より)

現場に立ち、空気を吸い、そして考える

 いままで述べてきた道を実際に歩いてみたら、みなさんはどのように思われるだろうか。緑区側にも豊明側にも史跡があり、進路などを記した解説板もある。何事も現地に立ち、自分の目と足で確かめ、そして考えてみることが大切だ。

 近年、これまで言われてきた迂回説は否定され、善照寺砦から中島砦へ進出、正面から攻撃したとする説が有力になってきている。そのルートもいろいろ唱えられているが、当時、桶狭間へ行く道は後にできる有松村から長坂道を経るものしかなく、丘陵や山地の道なき道を駆けるのは大変なことである。

 桶狭間保存会の方々を中心にした主張も、中島砦から有松までは扇川と手越川とに挟まれた高地を走っている。休憩中の敵はいつ発つか分からない。そうした時間との闘いの中で、いかに敵の目を逃れようとしたとはいえ、難儀する山の中を果たして選択しただろうか。

 縄文人は狩猟が中心の生活で、シカなどを追い掛けていたという。『目からウロコの縄文文化』を書いていただいた渡辺誠氏は「たとえ大勢で追い掛けたとしても、とても捕まえられるものではありません。何なら一度やってみて下さい」とおっしゃる。いまでもサルやイノシシが町に出没すると、なかなか捕獲できなくて大騒ぎになったりもしている。

 実際に山中を駆けるのは至難の業だ。従来の迂回説が否定されたのも、遠回りしていたのでは間に合わないからでもあった。その点、尾畑さんの説は合理的で説得力に富む。

 それによると、有松までは後の東海道に相当する手越縄手を進み、そこからは『信長公記』の言う「東へ向て」方向転換し、以降は手越川に沿って源流へとさかのぼる。しかも、迂回攻撃でも正面攻撃でもないこのルートだと、背後から義元を突くことまでできた。

 途中、大将ケ根(太子ケ根)を通る。後世、大将ケ根で兵を集めたとか、山に登り豊明側へ攻め下ったとされたりもしたが、ふもとを流れる手越川を駆け抜けていったというのが本当のところだろう。桶狭間をめざす一行に、ここで足をとめている理由などはない。

 この日、義元は沓掛城を出発したというのも否定された。近ごろでは大高緑地そばの漆山(うるしやま・緑区)まで来ていたとする説もある。これらはいずれも当時の道路事情や日程から見ても成り立たない。

 桶狭間の戦いは多くの謎を残した。尾畑さんの『証義・桶狭間の戦い』はこうした疑問に一つの回答を与えてくれている。今度はみなさんが自分の足で歩き、疑問の一つ一つに挑戦してもらいたいものだ。(「あとがき」より)

 

 


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