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■尾張国地名考

 尾張国地名考の著者津田正生先生の小伝

(原文のカナはひらがなにし、適当に段落を設け、句読点を入れた)

 尾張国地名考は津田正生の遺書なり。正生は安永五年四月、海部郡佐織村大字根高に生れ、嘉永五年十月二十一日、七十七才を以て没す。幼より学を好み、名古屋藩恩田仲任及び同藩儒官鈴木朖(あきら)に就いて学び、且つ費用を吝まず和漢の書を購ひ、刻苦研鑽、造詣最も深し。
 性、山川を愛し閑暇ある毎に高山大川を跋渉し、名社古刹を歴訪し、足跡全国の過半に及べりと云ふ。五十八歳の時、古人の未だ登攀せられざる信濃国槍ヶ岳の絶頂を探究し、後に槍ヶ岳日記を著はせり。其他、煙草心得草、眼前教近道、尾張本国帳集説、古典地名弁、尾張方言考、日本大社巡之記、臼挽歌註解、古学百人一首、簡易正方等の著あり。
 正生は机上の論、訓話の学を卑み、活物を捕へ之を精査して後、意見を披瀝するを常とせり。其材料を蒐集せんとするや或いは藤原隆国に倣ひて路傍に小屋を設け、茶を行人に饗して伝説を求め、或いは実地を踏査して日の暮るるをも忘れたるが如くなりしと云ふ。苦心の状想察するに足る。随って其著は何れも論拠正しく世を益し、蒙を啓くこと尋常著書の儔にあらず。
 尾張国地名考は殊に熱血を濺きて著はせるものにして、或は実地を見分し或は旧家を訪問し或は文献を渉猟し稿を改むること数回、刻苦二十年にして漸く成れり。之が為に費せる書損紙長持二個を満たし、紙料数十金、筆耕料二十四両を要せりと云ふ。
 其の各地見分の為め遍歴するや、初は羽織袴を着用せしが、里人却て敬遠するを以て、知多万歳を学び、自ら万歳題を撰み装束を鋏箱に入れて下僕に携へしめ、身には粗服を纏ひ裾を寰けて出て、里落に入れば則ち装束を着けて万歳を演じ、而して演技の間に古老を捕へて地理を研究せりと云ふ。苦心の程、想像に余ありと謂ふべし。脱稿して後、之を尾張公に献納せるに侯其功を偉なりとし、白銀若干を賜ひて厚く之を賞せらる。

 

 


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