◆ドラマはここから始まった!
――県下にある一千カ所の城跡を収録
愛知は信長・秀吉・家康の天下人を出した。彼らが世に出るまでには幾多の抗争が繰り返されてきた。県内各地に見られる城や砦、館などの遺構はそうした彼らの足跡でもある。
本書は戦国時代を中心に、県下約一千カ所の城跡を訪ね歩き、約一千点の写真とともに紹介する「愛知の城」決定版。忘れ去られたような小さな城からも、多くの武将たちが雄飛していった。将来を期待されながらも、夢やぶれてこの世から消え去った人も多い。
各地に残る城を自治体別に取り上げ、その城主や規模、経緯などを解説。城を通して知る、ユニークな歴史書とも言える。地元の人にとっては郷土史の入門書として、あるいは歴史散歩の資料に、また県外の人にとっては愛知の動きを知る解説書として、これが一冊あると何かと便利なはずである。
銀行員だった山田氏は早くから城に興味を抱き、退職してからはこの取材に明け暮れた。こうした城は当然のことながら山城が多く、その天守台に立つだけでも一苦労させられる。そこをいかにも律義な銀行員らしく、徹底的にこだわって歩き回った。
山田氏は「その間に愛車二台をつぶし、面接した古老・地元の人は五千人にものぼる」と述懐している。収録されている城の中にはすでに開発され、消えてしまったものも少なく、今後これを上回るものは望めそうにない。著者の城への愛着のほどがしのばれてくる一冊である |