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■円空と伊勢・円空寺

●円空その人が語られていないことへの不満 「はじめに」より

 円空(1632〜1695)作の木彫仏が芸術作品として注目されるようになったのは昭和30年(1955)ころからとされている。昭和の自由な感覚によって、円空仏は素晴らしい仏像彫刻と評価され、これまでに大小合わせて5000体ほどが北海道・東北・関東・中部・近畿の各地で発見されている。

 だが、円空の人物については、仏像12万体の彫刻を発願した僧侶だとか、個人の想像による人物論があるだけで、12万体の根拠は定かでないし、人物像にしても定説はない。また、儀軌(仏像の定義)に沿わない円空仏もあるため、間違いの多い人という陰の声もあって、まともな人物論はないにも等しい。

 これまでの評価を仮に「円空仏発見初期時代の人々による円空人物評」略称「初期の人物評」としてまとめることにする。筆者がこの「初期の人物評」に疑問を持ったのは平成5年ごろに「荒子観音にある円空作の千面菩薩は1024体の木端仏を内蔵していた」と聞いたときである。

 その話を知った瞬間、頭の中でひらめいた。1024という数字は2の10乗の値で、2進法に使われている有用な数字である。この数字にこそ意味があるはずと考え、謎解きを思い立った。

 まず、江戸時代の切支丹史・数学・言葉遊びなどを勉強した。江戸時代は切支丹禁制の時代で表現は不自由だったが、人々は語呂合わせ・洒落・判じ物などを用いて、真意を隠す文章や和歌を作り、程々に自由な生き方をしていたように思われる。この勉強と調査結果をまとめ、平成22年に『円空の隠し文』を上梓した。

 千面菩薩の厨子に表記された「子守之神」は聖母マリアのことかと考え、切支丹迫害の関係を調べ、平成28年に『円空とキリスト教』を上梓した。この書を見ていただいた金城大学文学部教授の楚輪松人先生から「円空は多宗教との共生を実行した人であろう」とのご意見をいただいた。この助言により筆者も開眼し、円空作の千面菩薩・両面宿儺・乙護童子の両面の意味が分ってきた。

 2020年、名古屋郷土文化会の会誌「郷土文化」に「郷土に誇る円空さん考」と題する論文を発表する機会を得た。この論考の中で、天聴に達した円空の徳音、12万体造顕の謎を解く成果を得た。だが、冊子は紙数に限りがあり、説明不足だったので、本稿では筆者が今日までに検討してきた結果を加え、円空の真の人物像に迫ることにした。(以下、略)

 

 

 


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