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■当世名古屋元結

 かつて髪を結ぶ元結は名古屋の特産品の一つだった。この「元結」の「結」に由井正雪の「由井」が掛けられている。題名の言わんとするところは「現在の名古屋における由井正雪事件」ということではなかったか。

 この物語は幕府の乗っ取りを図った尾張版由井正雪事件だ。時代は“尾張藩中興の祖”と言われる九代藩主徳川宗睦(むねちか)のとき。一味は跡継ぎのいない将軍を暗殺すれば、尾張に将軍の座が回ってくる、と読んだ。成功すれば自分たちも大名くらいにはなれる。

 従来、この本は“作り話”として顧みられなかった。そのため史実と比較して究明する人もなく、長いこと埋もれてしまっていた。が、歴史はここに書かれている事件の結果通りに動いていた。

 一味はまず尾張の若殿を暗殺する。宗睦の嫡男治休は若くして死に、高須藩から迎えた治行もこれまた亡くなっている。寛政10年(1798)養子として一橋家から斉朝を迎え入れた。しかし、その翌年には宗睦が亡くなり、斉朝が十代藩主に就任する。初代義直以来続いてきた尾張徳川家の血統はついにここで途絶えてしまうのである。

 一味は江戸城中に手を伸ばすが思わぬところから発覚し、幕府の手によって市中引き回しのうえ、尾張藩の刑場土器野(かわらけの、西春日井郡新川町)で処刑されている。江戸での取り調べ中に獄死した者もいる。彼らを捕らえるときは幕府の役人が名古屋城下を固め、「開府以来の大騒動」になったという。

 この事件に思わぬ人物が巻き込まれていた。謹慎中の宗春に近侍したこともある学者の河村秀根である。彼もまた捕らえられて江戸で厳しい調べを受けたが、まったくの濡れ衣だったとしてすでに釈放されていた。

 この事件の背後には宗春亡き後も藩内に幕府への不満がくすぶり続けていたのだろう。巷には「謀叛を起こす者がいるとしたら河村秀根をおいて他にない」との風評まであったのだ。さて、尾張版由井正雪事件のテンマツとは――。歴史探索「徳川宗春」資料集(4)。

 

 


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