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■凶荒図録

 本書を復刻した年、平成15年は冷夏で米の不作が伝えられていた。幸い、古米は多く残されており、以前に味わったようなタイ米騒動はなかった。しかし、これが江戸時代だったら、大変な事態になっていたはずだ。

 この『凶荒図録』は明治18年に愛知同好社によって作られたもので、全国各地で起きた飢饉時の実態が絵入りで紹介されている。100両もの大金を持ちながら、食べるものを買えずにのたれ死にした旅人。授乳しようにも乳が出ず、赤子に乳首を食いちぎられる母親。あまりの多さに埋葬できず、カラスや犬の餌食になってゆく死骸。いまでは考えられないような惨状が次々と報告されていく。

 その一方では飢えに苦しみながらの善行や優れた対応策なども紹介されている。晴れ着なども売って人助けに励む夫婦、古老を呼んでかつて体験した飢饉の様子を語らせる活動、藩命によって名古屋の広小路や桜天神に設けられたお助け小屋、等々。苦しみながらも生き延びるための知恵と努力も払われていた。

 紹介されている飢饉の多くは享保17年(1732)、天明4年(1784)、天保7年(1896)当時の実態である。飢饉は50年ごとに来るとし、本の出版された当時がちょうどその時期に当たっていた。巻末に「救荒草木一覧」が掲載されており、そこには食べられる野草や毒のあるものが数多くあげられている。先の大戦を経験した人にとって、これは決してよそごとではなかったはずだ。

 この本は『尾張名所図会』の挿絵などで知られる小田切春江の手によって編集され、絵は当時の画壇をリードした木村金秋が担当している。地元で出版されながら、ほとんど知られていない。50年目に当たっていた当時、本書は大いに警鐘を鳴らしたことであろう。

 平成15年9月4日の朝刊は「昨年産備蓄米の凍結を解除し、在庫ゼロになるまで放出する方針」と報じている。この冷夏が2年、3年と続いたらどうなるのか。近年は異常気象に見舞われており、凶作がこれからも続くとしたら……。

 

 


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