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■刑罪大秘録

刑罰の実態をだれにでも分かるように

 今回完全復刻した『刑罪大秘録』は江戸時代の刑罰の実際を知る唯一の文献であるにもかかわらず、手軽に入手できるかたちでは存在していない。一般には『刑罪詳説』がよく引用されるが、その図は明治になって描かれたものである。

 大谷美隆氏は明治大学の刑事博物館の館長として昭和の初め、完全な刑具の復元を試みられ、「実際に当たって見ると、多くの本から出鱈目だと云うことが判る。特に「刑罰図譜」(『刑罪詳説』のこと)と云う明治初年出来た本杯は間違いが多い。比較的正確で本当の事を書いていると思われるのは、『刑罪大秘録』である。実際やって見て寸法が合うし理屈にも合う」と評価される。

 今回の復刻は筆者の所蔵するこの『刑罪大秘録』を底本として、明治大学の所蔵する二本と、『古事類苑』を参考にして校合したものである。

 松浦静山旧蔵の『刑罪大秘録』は着色されていて素晴らしい本であるが、モノクロで復刻すると図が不鮮明になるのと、献上本として作成されたためか、図中の説明が省略されている欠点がある。また、明治大学の所蔵するもう一本の原題は『徳隣厳秘録』とあり、内題が『刑罪大秘録』となっている本は図が少ないという欠点がある。

 筆者の所蔵する本も原題は『政刑秘鑑』となっていて、同じく内題が『刑罪大秘録』である。このことも検討に値するかも知れない。

 以上の事情と手軽さから、筆者の所蔵本を底本とした。そして、不足する図版を付録1として『古事類苑』から引用させていただいた。なお、目録の順番と本文とに相違があるが、その理由が分からないので底本通りとした。

 本書の内容が十分把握できない初学者には、石井良助氏の名著『江戸の刑罰』(中公新書))を薦めたい。かく言う筆者も本書によって原文の読みが可能になったものである。例をあげれば、牢獄の通路(外側)を「外鞘(そとざや)」と言い、牢房を「内鞘(うちざや)」と言うことである。

 また、氏家幹人氏の『大江戸死体考』(平凡社新書)も参考になった。様切(ためしぎり)の項で「御道具(様切に用いる刀のこと)を背負候程振上構え」の意味が氏の引用されている図で初めて理解できた。

 付録2には日本の私刑史上最大の幕末の攘夷派の記録を載せた。大いなる正義には、小さな悪は許されるという有史以来の論理――例えばレーニンが革命のためには銀行強盗も資金を確保するために許されると判断し、西郷隆盛が同様な論理で両替商を襲撃・放火させて幕府の威信の低下を図ったようなこと――は今日でもイラク等で実践されている。元総理はテロは断じて許さないと言う一方で、維新の志士を尊敬すると発言したが、志士=テロリストであった現実を知らないのである。

 一例を挙げれば塙保己一の息子次郎は幕府から外国接待の諮問を受けた帰路、伊藤博文・山尾庸三の両名によって攘夷の名で惨殺された。このテロリストが総理大臣に成り上がったのである。これらの犯罪が追求されなかったのは、彼らが政権を獲得したからなのである。この負の遺産を正しく継承することが、今日の国際平和を考える上でも必要であると思い、付録2を載せた。

 ・参考文献
 『明治大学刑事博物館資料』第16集・第17集
 『江戸町奉行事蹟問答』佐久間長敬著 人物往来社。

 

 


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