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■ 夷蛮漂流帰国録

現存するもっとも優れた写本か
カメハメハ大王に会った最初の日本人

 本影印の『夷蛮漂流帰国録』は翻刻されたものがないわけではないが、極めて少部数の研究誌であるため一般には知られていないのが現実である。唯一、影印の形で紹介されている『江戸時代ハワイ漂流記』(高山純著・三一書房刊)が入手できる程度である。

 この高山本は誤字・脱字が多く、高山氏は善本と主張されているが、付随文書の村方文書にのみ価値があると思われる。また『江戸漂流記総集』に所収されている「芸州善松異国漂流記」は長崎奉行所の記録とされていて、善松の口述も圧縮されている欠点がある。

 今日まで数ある漂流記の中で、この件の研究は進んでいない。それは漂流民8人のうち、善松を除く全員が死亡し、善松自身も1年後に亡くなっており、漂流を物語化する時間が与えられなかった事情も大きく影響しているものと思われる。

 善松たちはハワイ国王カメハメハ大王に初めて会った日本人である。そして、ハワイ住民の状況を「人物は男女ともに坊主にて云々」と報告した最初の日本人でもあった。

 世界に類を見ない漂流記の成立した背景には、日本人の識字率の高さはもちろんのことだが、鎖国下にあった日本人にとって、生きた海外の情報に対する切実な要求も大きく作用していたと思われる。例えば、松平定信の蔵書に多数の漂流記が含まれていた事実に、それを見ることができる。

 本漂流記の価値は今後より一層高まるものと思われるが、その前に各写本の比較研究をして、定本(複数の可能性もある)の確定をしなければならない。その点においてもこの影印本は当初広島藩に所蔵されていたと思われる本を写しているだけに、大きな役割を果たすものと思われる。

「はじめに」より 古文書に親しむ会講師 鬼頭勝之

 

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