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■防備部隊の艦艇

 

「防備部隊の艦艇(一)」の編集後記

 渡辺博史氏による一連の海軍艦艇シリーズも防備部隊を形成する小型艦艇を取り上げる段階となり、いよいよ最終盤を迎えた。渡辺氏からは既に本シリーズの最終巻となる次巻「防備部隊の艦艇(二)」(魚雷艇・魚雷艇隊)の原稿をいただいており、現在鋭意編集を進めている。

 この間、氏は病と闘いながら、一心不乱に、それこそ身を削るようにして、海軍の艦艇記録や人事記録の調査・確認・原稿入力に全力で取り組んでこられた。だが、最近はご自宅のベッドで身体を横たえられることが多くなり、文献の調査・確認作業にも困難をきたすようになった。熟慮の末、氏は一番最後の作業となった特設監視艇の部の途中で、艦艇記録の記述を終える決断をされた。

 特設監視艇の全艇について、氏は既に厖大な量の研究ノートを作成済みであっただけに、本当にあと少しというところで作業を断念せざるを得なかった氏の無念さは察するに余りある。だが、このノートは整理途上のもので、未だ調査・確認すべき事項がいくつもあったため、氏はこれをそのまま完成原稿とすることはされなかった。

 とはいえ、特設監視艇として徴用された各漁船の苦闘や健闘ぶりを少しでも紹介したいという渡辺氏の想いにはきわめて強いものがあった。厳しい体調にあるのを押して、氏は未整理とせざるをえなかった特設監視艇について、各艇の名称のほかいくつかの項目を記載することで、「特設監視艇の部」を締めくくることとされた。加えて、一度は断念された特設監視艇の解説をも書いていただいた(本書300〜301頁参照。なお、この項の冒頭で氏の率直な想いが綴られている)。

 海軍の個別艦船ごとの記録をまとめるという大業を終えられた今、氏にはこれを機会に、ゆっくりと休養していただき、一日でも早く体調が回復されるよう念じている。今後は無理のない範囲で評論活動などに取り組んでいただければと思っている。(平成28年12月・永井久隆)

「防備部隊の艦艇(二)」の編集後記

 海軍史研究家、渡辺博史氏による海軍艦艇シリーズ「護衛部隊の艦艇」「壮絶・決戦兵力 機動部隊」「艦隊決戦の幻影 主力部隊」「防備部隊の艦艇」は本巻をもって完結する。氏が本シリーズの初刊「護衛部隊の艦艇(一)」を自家本として出版されたのは平成24年7月、氏が80歳のときであった。発行の直前に前立腺がんであることが判明。以後、闘病生活を送りつつ、独力で全21巻、合計8,873頁にも及ぶ大作をまとめられた。

 驚くべきは渡辺氏の活動がそれだけに止まらないことである。この間、氏は既刊で好評だった「海軍艦艇要覧」の改訂版を出されたり、「空の彼方 海軍基地航空部隊要覧」(全8巻)の覆刻版を出されたり、同人誌に毎回エッセイを寄稿されたりと、まさに獅子奮迅の働きをされた。

 加えて、もう一つのライフワークである尾張名古屋の近代史についても、その著作を昨年と今年、それぞれ1冊ずつ上梓された(「幕末尾張藩の深慮遠謀 御三家筆頭の尾張が本当に何もしていなかったか」、「讃えよう名古屋の明治」)。いずれも発行元は、地元の郷土史出版で定評のあるブックショップマイタウンである。引き続き来年2月頃には「嵐に向かう名古屋の大正・昭和初期」の刊行が予定されている。

 重い病を得ながら80歳を超えてもなお、こうした超絶的で精力的な活動を続ける氏のことを知って、この人は天才ではないかと感嘆する方もおられる。もちろん、こうしたことは一朝一夕にできるものではない。何十年にもわたる真摯な努力のたまものなのである。

 実は現役時代、私は氏の部下だったことがある。上司としての氏は実務に堪能で、現場を重視、細部をおろそかにせず、業務判断は的確であった。氏が勤務終了後、夜の付き合いを大幅にセーブし、余暇を利用して海軍史や郷土史の研究活動に打ち込んでおられたことなど、当時の私はまったく知らなかった。

 退職後、ライフワークに専念できるようになってからは、海軍関係者や研究者の方などと交わりながら、次々と研究成果を発表されていった。思いがけずがんの告知を受けたときは大きな衝撃を受けられたが、生きていることの有り難さ、生命の有限さを強く意識されるようになり、寸刻を惜しんで執筆に没頭、調査研究成果の発表を急がれることとなった。

 渡辺氏のこれまでの研究活動の歩みについては「讃えよう名古屋の明治」の巻末に収録されたエッセイ「尾張史との出会い、海軍戦史刊行の動機 私の歩んできた道〈思い出の人々〉」が参考になると思う。本巻では、これまでの渡辺氏の研究・出版活動の総まとめとして、巻末に氏の研究略歴と著書目録を掲載した。

 前巻でお知らせしたように、渡辺氏は現在ご自宅で療養生活を送っておられるが、体調的には厳しい状態が続いて「る。とはいえ、相変わらず頭脳は明晰で、思考力、記憶力は抜群である。ご自宅にお伺いすると、ときに横になられながらも談論風発、海軍史から近代郷土史、果ては内外の政治情勢に至るまで、その豊かな学識に支えられた議論は止まるところを知らず、あっという間に時を過ごしてしまう。

 豊富な学識と組織人としての長年の経験で培われた優れた見識など、聞いているだけでも実に面白い。少しでも長く元気でいていただき、こうしたことについても、いつか文章にして周囲に教えて下さることを願っている。(平成28年12月・永井久隆)

 

 


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